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火を見ていると、心が安らぐのはどうしてなのだろう。
暖かなオレンジ色の炎。パチパチとはぜる、快活な音。それは、ずっと見ていても
飽きることがない。考えてみれば、火はいつの時代にも存在した。扱いを間違え
れば大事に至る事もあったが、時には獰猛な獣から身を守り、時には私たちの
生活の要として、重要な役割を果たしてきたのだ。
だからだろうか。火がこんなにも優しいと感じるのは。
火は、いつの世も、人の生活に深く密接していた。
熱くないと言ったら嘘になる。けれど、それだけではないものがある。
火というものはあの頃の、私たちが忘れかけていた素朴な人間らしさを、思い出
させてくれるのかもしれない。
鬼八の念を受けて、火を生み出せるようになった高耶。
高耶はこの能力に最初こそ戸惑いを見せていたが、いつしか自分の力として受け
入れたようだった。それは決して高耶にプラス面だけを与えた訳ではなかったが、
直江は、高耶の織りなす炎が美しいと思った。
(火を纏うあなたは、まるで炎の化身のようで……)
恐ろしさよりも綺麗だと感じた。
あなたが《力》を使う度に、その霊魂は削り取られていくと知っているのに、私は
あなたの生み出す炎から、目を離す事が出来なかったんだ。
(高耶さん……)
眠る高耶を抱きしめて、その髪を梳いてやった。
サラサラと指の間を通る、くせのない黒髪。穏やかな寝息。
疲れた体を横たえて、今は静かに眠るあなたの中にも、暖かな火が灯っているのを
私は知っている。
暫しの休息に、あなたはどんな夢を見るのだろうか。
遠い昔の出来事ですか? それとも、来るべき未来の出来事ですか? それとも
……。
直江は目を伏せると、小さく微笑した。
(いつか、聞かせて下さいね、私にも)
あなたの夢を。
護るから。あなたの中に燃え続ける、心の炎ごと。
(愛しています)
胸に手を当てて、囁いた。
それは、未来永劫変わらない愛の言葉。
この想いが、いつまでもあなたを包み込んでくれるように。
あなたを護ってくれるように。
祈るように目を閉じた。
だから今は眠れ、愛しい人よ。
その体ごと抱きしめるから。
私が生み出す無尽蔵の愛に包まれて、安心して眠るがいい。
(高耶さん…)
―――愛してる。
数多の星が瞬く、夏の暑い日。
自分の中の太陽に、そう囁いた。
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