花火


遠くで、花火が揚がる音が聞こえた。
尺玉だろうか。
ボン! という大きな音共に地響きがした。
生憎花火は見えなかったが、
遠くで花火を揚げているんだな、と思うだけ
で嬉しくなる自分がいた。

昔はよく妹と、花火を打ち上げる河川敷に
まで行ったものだ。
小さい妹は甘え上手で、高耶の手を引いて
はあれこれと食べ物を強請ったものだった。
花より団子な妹に呆れつつも、リンゴ飴を
買ってやると美弥が嬉しそうに笑った。
「お兄ちゃん、ありがとぉ!」と。
その笑顔は、天に咲く花火よりも綺麗で、
思わず目を奪われたものだ。

―――妹のくせに。

妹のくせに、……可愛い奴。


そんな妹とも、もう随分会っていない。
寂しい思いをしていないだろうか。
泣いたりしていないだろうか。
今は遠く離れてしまったが、願わくば、この天に
咲く大輪の花火を、今、妹も見ていますように。
同じ光を見ていますように。

高耶は祈らずにいられなかった。

2004.7.23
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