凍てつく夜に


自然界に生きる、すべてのものが眠りにつく夜半過ぎ。暗闇に閉ざされた部屋の中央に、
縺れる影が二つ、闇を割くかのように揺れていた。
ベッドの上には紅い花びらを躯中に散らせた青年が横たわっており、その上には青年より
一回り大きい男が覆い被さっている。男は、青年の耳に甘い「毒」を注ぎ込みながら、青年
の下腹部で左手を怪しく蠢かしていた。その手が悪戯を仕掛ける度に、青年は息を詰めて
襲いくる波に耐えるのだった。
「なお…っ」
耳の下の柔らかい部分をキツく吸い上げた途端、組み敷いている高耶の口から抗議の声
が上がった。ピチャッという卑猥な音と共にねっとりとそこを嘗められて、ぞくぞくしたもの
が背筋を這い上がってきたのだ。
「どうしたの? キモチ、いいでしょう?」
耳に囁かれる笑いを含んだ男の重低音に、高耶はカッと顔を赤らめた。反射的に男へと手
を伸ばすが、左手に捕らえられている股間のものをぎゅっと握られて高耶の口から小さな
悲鳴が上がった。
「ぁ…、んっ!」
弱い部分を刺激する事によって高耶の抵抗をなんなく押さえた直江は、下方へと体をずら
した。そして握りしめたものから温かい体液が滲み出てきたのを知ると、切なげに打ち震え
ているものに舌を絡ませた。
「あっ、ん、や…ぁっ!」
そそり立つ堅い幹に、ざらりとした舌が余すところなく這い回って、高耶は目に涙を溜めな
がら歓喜の声を上げる。まるで生き物のように、自由自在に動く肉塊に否応なく追いつめ
られる。このままでは自分の知らないどこかに意識を持って行かれそうで、怖くなった高耶
は制止を促すために直江へと手を伸ばすが、その手は辿り着くことなくシーツへと落ちた。
高耶は無意識のうちにシーツに指を食い込ませていた。その弱々しく掻きむしる姿が、直江
の欲情を更に煽るものとは知らずに。
先ほどまでの男の巧みな愛撫でただでさえ敏感になっている自身に、焦らされることなく
与えられる舌戯。最初は嫌がっていたくせに、高耶の顔にはいつしか満足そうな笑みが浮
かび始めていた。
「どうですか? 気持ちいいでしょう? あなたのここ、もうこんなになっている」
その顔を見て満足した直江は、高耶の屹立したものを口腔にすっぽりと含むと、それに歯を
軽く立てながら前後の動きをくり返してやった。たまらない刺激に、高耶の口から喘ぎが漏
れ始める。
「アッ…、ハ、い、やぁ……!」
熱い粘膜に包まれただけでもかなりの快感を運んでくるというのに、直江の歯に擦られる
形になった高耶は、ダイレクトに伝わる刺激に感じてしまって髪を振り乱してよがった。
掴んだままのシーツの皺が大きくなる。
「んんっ、んんっ!!」
直江の口内に収まっている高耶の肉棒は限界まで膨れ上がり、その先端からは耐えきれ
なかった高耶の精液が止めどなく溢れる。直江に銜られている部分からどうしようもない疼
きが生まれ、高耶は意識しないまま腰を振ってさらなる刺激を直江に求めた。
「あ……! ハ…ッ……なお」
「あぁ、あぁ、可哀想に…。大丈夫、今してあげるから」
それに気づいた直江は高耶のものから一端口を外すと、もう一度それを口に深く含んで、
キツイ吸引を施してやった。
「ンンッ、ンンッ、ンアー…っ、も……っ!!」
その吸われる感触に耐えきれず、高耶は体をビクビクと痙攣させながら直江の口内に若い
精を飛び散らせた。あまりの開放感に目が眩む。何も考えられなくなって達したまま体を横
たえていると、饐えた匂いが鼻をついて思わず眉を寄せた。
熱を解放することによって体を弛緩させた高耶は、その余韻に浸りながら疲れた体をベッド
へと沈めた。苦しい甘攻めから一時的に逃れられた高耶の顔には、安堵のようなものが見
て取れる。
直江は口内で受け止めたそれを飲み込むと、未だ忙しない息を繰り返している高耶の脚を持
ち上げて大きく開かせた。全てを晒すかのような恥ずかしい恰好だ。
「なっ…なにすっ……、なおえ!」
露わになった桜色の秘奥に舌を伸ばす。
「ひぁっ!!」
達したばかりの高耶のそこはひくひくと収縮を繰り返しており、直江がそこを舌でノックして
やると、銜えるものを待ちかねるかのように可愛らしい口を開かせた。
「フフ…、あなたが嫌がっているのは上の口だけのようですよ。下の口は、…ほら、こんな
に素直だ」
直江がその周辺を唾液で濡らし始めると、高耶のそこは更なる刺激を求めて収縮を繰り返
し、熱い舌を取り込もうとする。
「可愛い人だ。口では嫌がってみせても、体はこんなにも正直だ。俺が欲しくて仕方ないん
でしょう? 待っていて、今、入れて上げる」
直江はことさら卑猥に囁くと、高耶の返事を聞かないまま、そこに押し込むような形で舌を
挿し入れた。
「ヒァ……!」
自分の中に入ってくる生暖かい異物に、肌を粟ただせた高耶の口から高い嬌声が上がっ
た。
「ああぁっ! んぁっ…!」
「本当に可愛いですね、あなたのここは」
危険な場所に男の熱い吐息を感じて、高耶はたまらなくなった。直江に全てを晒す形に
なっている姿勢も恥ずかしくて、消え入りたい気分になる。羞恥と屈辱から、高耶の目から
涙が一粒転がり落ちた。
「……」
高耶の涙に濡れた赤い目に若干の罪悪感を覚えた直江は、少し困った顔を見せた。
「高耶さん、もう少し我慢して下さいね」
直江は揶揄るのを止めると、高耶の足を下ろして伸び上がった。涙の後を辿るように頬に
舌をツツ…と走らせ、目元に残る滴をすくい取ってやる。そしてあやすように啄むようなキス
を降らせていると、高耶が両手を上げて直江の頭を引き寄せた。
「…………」
「え…?」
高耶が何事かを囁いたが、あまりにも小さな声だったので聞こえない。直江がもう一度と
促すと、高耶は顔を赤らめながら口を開いた。
「…キ…ス………て、……れ」
至近距離でおねだりをされた直江はその言葉に一瞬目を丸くさせたが、すぐに嬉しそうに
微笑むと高耶が満足するまで口内を激しく犯したのだった。




「あ……」
「どうしました?」
後ろから貫いた状態で体を横たえていると、高耶の口から小さな声が上がった。
あれからお互いを貪った二人は、力尽きてベッドに深く沈んでいた。何度も高耶の細い腰
を貫き喘がせたにも関わらず、高耶が離れることを嫌がるので、今も彼の中に自分のもの
を収めたままにしていた。
「ん……。窓、明るいからさ、雪、降ってんのかなぁ、って思って」
熱い吐息を零しながらゆっくり話す高耶に、直江は小さく微笑んだ。
「そうですね……」
窓をと見ると、なるほど、いつもと違ってぼうっと明るく感じた。
直江の実家の宇都宮ではまとまった雪はあまり降らないのだが、珍しく大雪に見舞われた
時に、やはり今のように窓がぼうっと発光していたのを覚えている。きっと高耶の言うとお
り、雪が降っているのだろう。
「どうりで、寒いと思った、ぜ」
唇を小さく突き出して毒づく高耶に、直江はくすっと笑みを零す。
「おや? …あんなに動いたのに?」
耳元に揶揄を含んだ言葉を吹き込まれて、先ほどまでの行為を瞬時に思い出した高耶は
カッと顔を赤らめた。いつになく興奮していた高耶は思わず自分から男を求めてしまった。
それのことを言っているのだろうか?
耳までも赤く染めた高耶のその様子が可愛くて、直江は少し意地悪な気分になった。
「ねぇ、……まだ寒いんですか?」
「う、う、うるさいっ。……あっ、つ……!」
直江の嫌味を感じさせる口調にムッとした高耶は、男から体を離そうとした。だがその途端、
銜え込んでいる直江のものに中を擦られてその場に沈没してしまう。
「ああ、急に動くからですよ。……それより、もう一度しますか? あったまりますよ」
「ぁ……バカ」
熱い息と共に耳朶をカリッと囓られて、高耶の体がぴくんと跳ねる。その反動で銜え込んで
いる直江のものを自ら締め付けてしまった高耶は、ウッと小さく呻いた。散々嬲られたもの
にはまた長い指が絡まり、高耶を高めようと妖しく動き出す。
「あふっ…」
高耶の口から、収まっていた喘ぎが溢れた。
「やぁ……ん、なおえっ」
口から出た制止の言葉とは反対に、男の腕に自分の手を絡ませその先を強請る。
もっと、もっとと……。
「高耶さん、今夜はずっとこうして抱いていてあげる……」
男の吐息が、凍てつく夜気をそっと震わせる。
腕の中の高耶は、夢見心地のまま、目を……閉じた。



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