風邪にはご用心!?


「―――ゴホゴホッ。ゴホゴホッ」
「? 高耶さん、…風邪、ですか?」
ソファに深く凭れて、テレビを見ていた高耶がふいに咳込んだ。今まで咳なんてしていな
かったのに、どうしたというのだろう。明らかに不自然と思える咳に、直江は心配そうに声
をかけた。だいぶ暖かくなったとはいえ、薄着をするのにはまだまだ早いこの季節。夜に
もなるとグッと気温が下るため、健康に留意していないと風邪を引きやすい。
「ん……。そうかなー。喉、痛いかも」
そう言って喉に手をやる高耶。直江は席を立つと高耶の元に歩み寄った。前髪をかき上げ
て額に手を当ててみるが、熱はないようだ。
「念のため、今日は早く寝た方が良さそうですね」
「え〜〜!」
見たいテレビがあるのに、と不満そうに頬を膨らませる高耶に直江は厳しい顔をした。
「風邪はひき初めが肝心なんです。あなた、前にもこじらせて病院にまで行ったことがあり
ましたよね? また、注射打たれてもいいんですか?」
「う……」
注射は別に嫌ではないが、あの、病院の待ち時間にはウンザリしてしまった高耶だ。
「でもよぉ…」
テレビ見たい。高耶の目がそう言っている。けれどここで甘やかすわけにはいかない。
「高耶さんっ」
「……チェッ」
わかったよ、と高耶は言うと、恨めしそうに直江を見た。




「高耶さん、寝ましたか?」
直江が風呂上がりに寝室を覗いてみると、電気は既に消されていた。それに、よしよしと
頷いた直江だったが、高耶のベッドに目をやった途端、ガクリと肩を落としていた。
高耶のかけ布団が、ベッドの下に落ちてしまっている。そしてベッドの主である高耶はと
いうと、寒そうに背中を丸めて眠っているではないか。
(これでは風邪をひくはずだ)
直江は額をおさえると、電気をつけて高耶のベッドに歩み寄った。
「高耶さん、高耶さん」
「んあ…」
名前を呼びながら肩を揺すると、高耶が眩しそうにうっすらと瞼を開いた。
「なに、なおえ……」
眠そうに目を擦りながら起き上がる高耶に、
「駄目じゃないですか、布団が落ちていましたよ。これでは、風邪をひくのは当り前です」
「あ…。どうりで寒いと思った」
高耶が寒そうに体を震わせながら言うのに、直江はヤレヤレとため息をついた。
「すっかり体が冷えてしまっているじゃないですか。全くあなたときたら」
と、ブツブツ文句を言っていた男はやおら、わかりましたと呟いた。
「……わかりました。では、こうしましょう。高耶さん、つめて下さい」
「……は?」
「ですから、そこつめて下さい。私が隣りに寝ます」
「なっ、何でそうなるんだよっ」
「私があなたの布団を押えてあげますよ。そうすれば、布団を落とさなくて済むでしょう?
それに、私がいた方が温かいですよ」
いけしゃあしゃあと直江は言うと、高耶の了承も得ないうちに勝手にベッドに上がって
しまった。そうして落ちていた布団を手に取ると、電気を消して自分達の上にかける。
「お、おい、直江」
「私のことは気にしないで。湯たんぽだと思えばいい」
(……って、気にしない訳ねぇじゃねぇか〜〜!)
二人が何もせずに同じベッドで過ごした夜は、今までに、ない。なので高耶は妙に意識
してまって、直江の視線から逃れるように背を向けた。が、そうするとうなじの辺りに直江
の温かい息がかかってしまって、高耶はますます意識してまう。
(こんなんじゃ、寝れねーよ!)
「高耶さん」
何を思ったのか直江が身を寄せてきたので、高耶はますますドキドキした。
(わわっ!)
ピタ、と直江の広い胸が高耶の背に合わさった。そこから温かいぬくもりが伝わってくる。
それはとても気持ちが良く高耶の心を和ませるものだったが、ふと臀部の辺りに柔らか
いものを感じて、高耶は顔を赤らめた。
この感触って……。
「な、なお…」
「どうしました?高耶さん」
「もっと、…離れろよっ」
高耶が身じろぎながら言うのに、直江は不思議そうな声を出した。
「どうして? この方が温かいでしょ?」
言いながらますます体を密着させてきたので、高耶は焦った。
「バ、バカッ! あ、当たってんだよッ!」
「当たって……? ……あぁ、コレの事?」
直江はククッと笑うと、その部分をわざと押しつけてきた。
「!!」
「高耶さん…、したくなっちゃった?」 
「ア、アホッ!!」
高耶が耳たぶまで真っ赤にさせて逃げようとするのを、直江の力強い腕が遮った。
「お望みでしたら、いいですよ。布団がいらなくなるぐらい熱くさせてあげる」
「な、なに言ってんだよッ! オレは風邪ひいてんだぞ!!」
「もう遅い。我慢出来ません」
振り返って文句を言う高耶に直江はクスッと笑うと、高耶の抵抗をものともせず上に
のしかかってきた。
「お、重いっ。………あっ!」
直江が、まだ柔らかいものを高耶の股間に押しつけてきた。そのまま腰を上下に動かし
てそこに擦りつけてきたので、高耶は顔を仰け反らせて喘いだ。
「あっ、あっ」
パジャマの上から直江の大きいものに擦られて、高耶のものも徐々に形を変え始めた。
布地の上から擦られるだけでも多大な快感を運んでくるというのに、その快楽を生み
出しているものが自分と同じ男のものかと思うと、高耶は恥ずかしくてたまらなかった。
だが、高耶がシーツを握りしめて耐えるのをあざ笑うかのように、そこはどんどん熱くなる。
気がついた時には、どちらの股間もそれとわかるほど盛り上がっていた。
「あふ……」
高耶が甘い息をついているのを尻目に、直江は高耶のズボンを下着ごと取り去った。
「! …ぁんっ」
衣服を剥く際に、高耶の勃起しているものに下着が引っかかってしまったらしい。その時
の強烈な刺激に、高耶は思わず恥ずかしい声を上げていた。大きく反り返ったものが
ピクピク震えている。直江は薄く笑むと、自分も衣服を脱いで高耶の上に覆い被さった。
「高耶さん、……くわえて」
その言葉にギョッとして目を開くと、直江の大きなものが目の前にあった。直江は高耶の
上に四つん這いになって、その股間を晒していたのだ。 
「な、なおえっ」
直江のあまりの痴態に、高耶は沸騰しそうなくらい顔を真っ赤にさせて声を上げた。
(な、直江がこんなコトするなんて……っ!)
初めてのことに、高耶はただ動揺するだけだった。だが、そんな高耶に直江は、
「何を驚いているんですか。私が前にあなたにしてあげたでしょう?高耶さん、とても気持
ち良さそうにしていましたよねぇ。その顔だけで、イッてしまいそうでしたよ」
その時の事を思い出したのか、直江はクスクスと笑った。その振動で高耶の前にある
ものも小刻みに揺れたため、あまりの卑猥さに正視出来なくて高耶はギュッと目を瞑った。
(うぅ……、こんのバカッ)
あまりの事に、罵りの言葉しか出ない。だが、直江の口から出た次の言葉に高耶は目を
開けた。
「たか、やさん…。早く……っ」
(あ…。直江、辛そう……)
そう思った時には、高耶の口は直江のものを含んでいた。同じ男のものだ。彼がどんな
に苦しんでいるのか、声に滲んだ苦痛だけでわかる。とても恥ずかしかったけれど、もう
今さらである。
高耶は力強く上向くそれを手で支えながら、深く口内に取り込んだ。舌と歯を使っていつ
も直江にしてもらっているように高めていると、直江のものはすぐに大きく堅くなった。それ
に夢中で舌を絡ませていると、ビクビクと震えたそれの先端から、白いものが滲み出てき
た。
「……ん…」
「高耶さん…、吸って」
深い声が耳に届いた途端、高耶はそこを強く吸っていた。大きく口を開いてキツく吸引
する高耶。その表情はとても淫らなものに違いない。直江は、高耶のその顔が見られな
いのが凄く残念だと思った。
やがて、高耶の施しによって達した直江は、そこからゆっくりと楔を抜き取った。
「…ぁ……」
高耶の口から惜しむような声が上がる。それにクスッと笑うと、直江は高耶の足元に膝
をついた。そして、直江を愛撫しているうちに育ったらしいものを愛しげに見てから、
高耶の足を折り曲げて大きく開いた。
「っ!!」
「スゴイですよ、あなたのココ。何もしていないのにヒクヒクしている」
「…っ! やっ…。見る……なッ」
「可哀想に…。銜えたくて仕方ないんでしょ?」
言うと直江は、いきなり指を2本挿しこんできた。
「あんっ」
グリグリと指を動かして高耶のイイ所を深ると、ズッとそこに指の腹を擦りつけてきた。
「んんっ、んんっ! や…っ、なお…っ!」
指をそこに擦りつける度に高耶の体が跳ね、前から先走りの雫が飛んだ。もう、頂点まで
ギリギリなのだろう。直江は引っかくようにしながら指を引き抜くと、半勃ちのそれを高耶
の秘口に潜り込ませた。
「あっ……」
「少し我慢して。すぐ復活させるから」
直江は強くその部分を押し込むと、体を揺らしてそこに刺激を送った。連動して動く高耶
の口から、甘い悲鳴が上がる。
「あぁんっ、あっ……アァッ」
ほどなくして堅くなったそれは、高耶の狭いそこを内側から押し広げた。直江が擦りつけ
るように出し入れを繰り返してやると、ようやく高耶の口から満足そうな声が上がった。
「アァッ!……んっ、いっ……、アッ!!」
「…っ。俺も…っ、すごく、イイ……です…よ…」
熱く掠れた男の声が、高耶の脳を甘くとろけさせた。




「なんだかなぁ」
ソファに寝そべった高耶は、皮肉げに呟いた。
穏やかな昼下がり。淫らに求め合った熱い夜は、高耶が意識を飛ばしたことによって幕
を下ろした。
その翌日(?)。高耶と直江は特にすることもなく、贅沢に時間を貪っている。
「いいじゃないですか、治ったのですから」
直江がにこやかに言うのに、高耶は呆れた顔をした。
「お前はお気楽でいいよなっ。てか普通、悪化しねぇ? あんなコトしたら」
あんなコトとは言わずもがな。昨夜の情交を指している。
「……それは私達の日頃の行いが良いから、なんじゃないですか?」
「どこがだよ」
高耶は憮然とすると、明らかに機嫌の良い男を睨んだ。そんな高耶をにこにこしながら
見ていた直江は、ふと意味深に微笑んだのだった。
「―――あ、もしかしたら、私の「注射」が効いたのかもしれませんよ」
(! 注射って…)
「―――!? バ、バカッ」
高耶は傍らにあったクッションを手に取ると、直江の顔面めがけて投げつけた。



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