| 大人のアイスキャンディ
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「やっぱり水ヨウカンにすっかな〜」 そう呟くと、高耶はキョロキョロと店内を見渡した。 目の前に、色とりどりの美味しそうなお菓子が所狭しと並んでいる。その中でも一際 目を引いたのが、今高耶が目にしている水ヨウカンであった。何て事はない普通の ヨウカンなのだが、しぱらく食べる機会がなかったからだろうか。高耶の視線はなん となくヨウカンに向かってしまうのだった。 高耶は今、巷で評判の菓子店に来ていた。と言うのも、明日から3日間、実家に帰る 為だ。美弥には「お菓子なんて買ってこなくてもいいよぉ」と言われているのだが、 日頃家を空けている高耶としては、たまには家族に美味しいものを食べさせてあげた い。むろん松本にも美味しいお菓子はたくさんあるけれど、普段食べた事のないもの というのは、それだけで嬉しいものだ。と言うわけで、最近何かと評判の菓子店に足 を運んでみた高耶だった。しかし、確かに珍しいものはたくさんあるのだが、どれも高 耶の目に止まる物ではなかった。珍しいだけではダメなのだ。美味しくなければ。 そんな高耶が悩みに悩んだ末選んだのが、先ほどの水ヨウカンであった。 「まぁ、こんなもんか」 変わった物を買いたかった高耶はやや不服だったが、仕方ない。高耶は水ヨウカン の箱を持つと、会計をするのにレジに並んだ。 菓子を求める客で賑わっている店内はレジも混雑していて、なかなか会計を済ませ られない。手持ちぶたさな高耶はなんとなく首を巡らせた。と、その視線の先に、一枚 の張り紙が目に飛び込んできた。 (ん? …おとなの、アイスキャンディ……だって……?) なんてことないネーミングの商品に、だが高耶は頬をうっすらと赤らめた。 (アイスキャンディって…) ふいに浮かんだのは昨夜のワンシーン。高耶は同居している男に、昨日さんざん 嬲られたのだった。その時、しきりに男が口にしていた言葉が、 ―――高耶さん、ここ、アイスキャンディのようにぴちゃぴちゃしゃぶってあげる。 情事特有のあの深みを帯びた声まで思い出してしまって、高耶は瞬時に顔を真っ 赤にした。 (う、うっわー、オレ何考えて…) 意図的ではないとはいえ(それはそれで却って悪い気もするが)、こんな事を思って しまう自分が恥ずかしかった。でもまだ、普通のアイスキャンディだったなら、こんな 事は思わなかったかもしれない。あくまで、「おとなの」の部分に意識してしまった 高耶は、幻聴を追い払うかのようにブンブンと頭を振った。 と、その時である。それを遠くで見ていたらしい男が、不思議そうに声をかけてきた。 「どうしたんですか? 高耶さん」 「わわっ! なっ、なおえっ」 いつの間にか、高耶が顔を染める事になった元凶がすぐ後ろに立っていた。 駐車場が混んでいた為、降りるに降りられず、今まで車の中にいた直江だ。こうして 店内に入ってきた所を見ると、どうやら車を停める事は出来たらしい。 「? 何をそんなに驚いているんです? あなたが、車をどこに停めたかわからない だろうと思って、知らせに来たんですよ」 「えっ、あ…そ、そうか……」 男の言葉に納得した高耶は、そのまま視線を外した。 とてもじゃないが、今、男の顔をまともに見らる事が出来ない。こんなまっ昼間の、 しかも公共の場所で変な事を思い出してしまった自分が恥ずかしかったし、それを 目の前にいる男に悟られる訳にもいかない。何故なら、彼は普段は優しいくせに、 こういう色事に関しては容赦が無い…と言うか、高耶の弱みを握ってアノ時にさん ざんイジメるからだ。直江という男は。 だから絶対に知られる訳にはいかないと、ふいと視線を外した高耶は、ちょうど 会計の順番が回ってきたのに安堵の息を吐くと、尻ポケットからサイフを取り出し た。そんな高耶に首を傾げた直江は、ふと、今まで高耶が見ていた辺りに視線を 転じてみた。 そして、例の張り紙を見てしまったのだった。
「んんっ!」 首筋を舐められた高耶が、舌の感触に感じて大きく体を震わせた。熱くザラリとした 直江の舌が、高耶の白い首を下から舐め上げている。くすぐったさと共にゾワリとした ものが背中を這い上ってきて、高耶は荒く息を吐きだした。 「ん、んんっ。なお……、そこ…ばかり……ぃや…」 いつまで経ってもそこから離れない直江に抗議の声をあげると、直江はくすりと笑っ て耳朶を甘噛みした。そのまま何度か柔らかい肉を噛んでから、いきなり穴の中に 入ってきた舌に、高耶は驚いて鋭く息を呑んだ。 「ヒ、アァ……!」 濡れた舌が、耳の中を優しく探っている。その感触がたまらなく快くて身を捩って いると、今だ触れられていなかった胸の飾りに、直江の指が絡んできた。 高耶のそこは、何の愛撫も施していないのに既に勃っていた。転がすのに丁度良 い大きさのそれに直江は親指を乗せると、舌での愛撫はそのままに高耶の肉球を 弄り始めた。 「アッ…、んっ! な、お……、あっ……あぁ…っ」 男の腕の中で、高耶はしきりに体をくゆらせる。そんな彼に欲情した直江は、耳から 外した舌を滑らせて、もう一つの胸飾りに唇を寄せた。 いきなり噛んでやると、高耶がビクッと胸を反らせた。高耶の手がシーツを掴むのを 目の端で捉えた直江は、今度は舐めるだけのソフトな愛撫に変えてやる。とたんに、 片足を立てて腰を揺らし始めた高耶に、直江はうっすらと笑みを浮かべた。 「もう我慢出来ないの? 高耶さん」 肉球を唇に挟み込んだまま問いかけると、高耶が「アァッ!」と首を仰け反らせた。 「バ…カッ。しゃ…べんな……」 予測不可能な刺激が高耶を追い詰めているらしい。シーツを掴んでいた手を口元に 持ってきて、耐えるように唇に当てている。 「どうして? 感じる、から…?」 「あ、ぁん…」 男の唇が、歯が、高耶の敏感になっている乳首に当たる。それに酷く感じてしまった 高耶は男から逃れるように手を伸ばした。 「も…ぉ、やめろって……」 「やめてもいいの? ここをこんなにしてるのに」 顔を上げた直江が、高耶の股間をじっと見ている。それに気づいた高耶が膝を寄せ て隠そうとするのに、直江は強引に開かせることで阻んだ。 「高耶さんのここ、もう涙を流している。あれだけで感じてしまったの?」 「!」 高耶がカアァァ……! と顔を赤らめた。 一見ヒドイと思われがちな直江の煽り文句であるが、実は二人にとっては日常茶飯 事であった。高耶は(本人を目の前にハッキリとは言わないけれど)マゾヒストだ。 手酷い言葉や扱いを受ければ受けるほど、燃え上がる。「嫌だ」なんてただの挑発 だ。嫌がってみせて、実は酷く快感を覚えているのが手に取るようにわかる。そして そんな高耶の心理状態を熟知している直江は、高耶をこれ以上はない高みに上ら せるためによく使うのが、これらの煽り文句だった。 事実、今の高耶は羞恥と屈辱に震えつつも、その体はヒドク反応している。足の間 にあるものは、まだ一度も触れていないのに完全に勃ち上っているし、直江を見返 す黒い瞳は溢れそうな欲望に甘く潤んでいる。更に、高耶が隠している最も卑しい 部分では、直江を待って淫らに収縮していることだろう。 直江は、高耶の足を卑猥なくらい大きく広げると、打ち震えているものの下にある ものをじっと見つめた。果たして桜色のそこは、直江の想像通り物欲しそうに喘いで いた。 「可愛い高耶さん。待っていて。今、いいものをあげるから」 直江はそう言い残すと、高耶を置いて部屋を出た。 しつこい愛撫から解放されてやっと一息ついた高耶は、体の中で燻る熱に耐えなが らうっすらと瞳を開いた。 (直江……。どうしたんだ…) こんな時に席を外すのは珍しい事だった。常の直江だったら、片時も離そうとしない のに。それに高耶としても、今のこの状態で放っておかれるのはかなり辛い。早く戻っ てきて続きをして欲しかった。早くここに来て、もっともっと手酷く扱って欲しいと、体内 で蠢く淫らな熱を抑えながら上半身を起こした時だった。 直江が手に棒状のものを持って部屋に入ってきた。それが何なのかを判別した高耶 は、驚きに目を見開いた。 「な、なおえっ。何で……?」 「どうしたの? そんなに驚いて。美味しそうでしょう」 どうぞ、とナイロン袋を取った直江は、高耶の目の前に白い物を差し出した。 高耶の目の前にある、それからは涼しげな冷気が立ち上っている。高耶が訳がわか らず男の顔を見上げると、直江は優しい笑みを浮かべた。 「喉が渇いたでしょう? どうぞ食べてください」 「え…!? で、でも……」 口篭る高耶に直江はくすっと笑った。 「遠慮しないで。好きでしょう? アイスキャンディ」 意味深な物言いにカッと顔を赤らめた高耶だったが、喉が渇いていたのは本当だ ったので男の言葉にコク、と肯いた。が、何故こんな時に食べなくてはならないのだ ろうか。思わず眉を寄せる高耶に、直江はアイスキャンディをやや強引に高耶の唇 に押し当ててきた。 「ほら、溶けてしまいますよ」 そう言われては仕方ない。何でこうなったのかはわからないが、食べ物を無駄に する訳にはいかない。相変わらず、淫らな熱は体の中で燻っていたが、高耶は必 死にそれを抑え込むと、目の前に差し出されているアイスキャンディに手を伸ばした。 ミルク味のそれは、ヒリついた喉に気持ち良かった。思っていた以上に喉が渇いて いた高耶は、いつしか夢中でそれに舌を絡めていた。白いアイスキャンディに轟く紅 い舌。直江はコクリと息を呑むと、いきなり高耶からそれを取り上げた。 「なおえ…っ!」 玩具を取り上げられた子供のように、反発を込めた瞳で直江を見ると、直江はその唇 に際どい笑みを浮かべた。 「もう充分ですよ、高耶さん。ほどよい大きさになりましたからね」 「? ほどよい大きさって、何言って…」 「さぁ、さっきの続きをしましょう」 高耶の言葉を遮った男は、いきなり高耶の胸を押してシーツに倒した。不意をつかれ て転がった高耶の足を抱え上げ、放ったらかしにされていた部分を無遠慮に露わに する。 「て、てめぇッ! いきなり何しやがるッ!!」 「何って…、だから言ったでしょう、さっきの続きだって」 言いながら高耶の足を高く抱え上げ、晒された部分にそれを宛った。 「なお……っ! ヒ、ァ…ッ! つ、つめてッ!!」 高耶が大きく仰け反った。疼いていた部分に突如潜り込んできたそれ。見なくても わかる。それは、今まで高耶がしゃぶっていたアイスキャンディだ。 あまりの事にパニクって、高耶は何も行動を起こせない。そうしているうちにも、それ は高耶の熱い路をズブズブと突き進んでくる。 触れた一瞬の冷たさに、痛みを感じた。むずがるように腰を揺らす高耶に、直江は 生唾を呑み込んだ。 「…スゴイですよ、あなたのココ。俺じゃないものをこんなにギュウギュウ締めつけて」 「バ…ッ! な、なおぇ…、何やって…だッ…」 「あなたは本当に欲張り屋さんですねぇ。上の口だけではなくて、下の口でもこんな に美味しそうに頬張って。……あぁ、気を付けて。あなたの中は熱いのだからすぐに 溶けてしまう」 「…うっ、くぅ……っ。な、なおえぇ……。やめ、ろ……」 高耶の秘部に、白い棒状のものが埋め込まれていく。 潜り込ませた部分は、高耶の熱によってドロドロに溶け始めた。それが隙間から流 れ出てくるのにデジャヴを感じた直江は、そのあまりの淫らな図に我知らず好色そう な笑みを浮かべた。 「どうして? 欲しかったんでしょう? アイスキャンディ。あなたが食べたそうな顔 をしていたから、わざわざ買ってきてあげたんですよ。」 「!」 その言葉に、高耶は先ほどの直江の行動を思い出していた。 夕食前に「少し外出してきます」と言って出て行った直江。 恐らく、高耶に内緒であの菓子店に行ったのだろう。 「き、さま……」 「あぁ、でもこれは、あなたが欲しがっていた『おとなのアイスキャンディ』ではありま せん。売り切れていましたので、普通のアイスキャンディを買ってきました。あなたは 不服かもしれませんが、大丈夫。後であなただけが味わえる『おとなのアイスキャン ディ』をあげるから。だから取りあえず、これは残さずちゃんと食べて下さいね」 直江は手に持った棒に力を込めると、高耶の奥深くにそれを捻り込んだ。白い部分 が、全て高耶の中へと消える。棒のみを外気に晒している高耶は、あまりにも淫ら だった。 「あ、ぁ…ん」 今までそこに感じた事のない冷たさに、高耶は身悶えた。 上の口以上に熱いそこは、銜え込んだアイスキャンディをあっという間に溶かして いく。その異様な感覚が、高まった体にはたまらなかった。また、直江の変態的行動 にも、すっかり煽られてしまっている高耶だ。 徐々に小さくなる圧迫感に、高耶は物足りなさを感じていた。だがしかし、灼熱の襞 を擦るアイスキャンディの冷たさは、今の高耶には極上の刺激となっていた。 むず痒いような奇妙な感覚に支配され、感じるまま嬌声を撒き散らす。 「ぁ、ん…、あぁ……ん! やっ、アァ……! も…ッ、な、おえ……!」 体内で蠢く異物感に、高耶の目に涙が浮かぶ。だがそれは、異物を挿入されている ことへの不快感からではなく、物足りなさからくる涙だった。 (こんなんじゃ、――ねぇよ…ッ!) 直江の手によって身悶える高耶は、もっと強い刺激を求めて大きく腰を振った。 (いつものアレが欲しいッ! こんなのじゃなくて、もっと太くて熱いもの…!) 焦れた高耶は、悲鳴を上げながら直江を求めた。 ―――お前が欲しい……ッ、と。 やがて遠のく意識の中、高耶は痺れた部分に堅く熱いものが入ってくるのを感じた。 包み込んだ途端溢れた、安堵感と充足感。 入ってきたとたんわかった。本当に欲しかったのは、これだったと。 グッと奥底を突かれたのを最後に、高耶の意識は完全に飛翔した。
「明日、帰んのに…」 温い湯舟の中で、直江に優しく湯をかけられながら高耶は力なく呟いた。 あれから高耶専用の『おとなのアイスキャンディ』を銜え込まされた高耶は、直江の 手によって大いに乱れた。男のそれを銜える前に、冷たい物を入れていたせいだろ うか。いつも以上に熱く感じる男の肉棒に、高耶は息も絶え絶えだった。 気が付いたら、男の下で快楽にむせび泣く自分がいた。 「明日…、と言うか、もう今日ですね」 悪びれもなく口を挟んだ男に、高耶はギッと睨みつける。 「お前な〜」 あんな事をしておいて、何事もなかったような顔をしている男が恨めしい。 腕を振り上げて殴ろうとする高耶に直江はあっさりとそれを避けると、不意打ちのよう に高耶の頬にキスを落とした。 「なおえっ」 「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。明日から…、あぁ、もう今日ですね。 …今日から三日間、寂しい思いをする私を思えば」 (…え!?) 「あなたのいない三日間を思うだけで、今から胸潰れる思いですよ。せめて、今の内 にあなたの姿を目に焼きつけようと思って、何が悪いんですか」 憮然と言う直江に、高耶はハトが豆鉄砲をくらったような顔をした。 (え? え? ……って、じ、じゃあ何か? ただ、奴はいじけていただけだってぇの かっ!?) 三日間一緒にいられないからって。 それだけであんな……。 (やめろよな〜) いつもの事だけれど、こんな馬鹿馬鹿しい理由で自分はあそこまで乱されたのか。 高耶はあまりの事に眩暈を覚えながらも、優しく肌を撫でる直江の手に幸せを感 じずにはいられないのだった。 |
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