| プレゼント 小説:京香/イラスト:ハルキ |
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―――5月3日。 今日は、言わずと知れた直江の誕生日である。自分の誕生日はもちろん、普段か ら良くしてもらっている高耶は、お礼を兼ねて何かプレゼントをしようと考えていた。 ガラじゃない事はわかっている。けれど、無条件で何かしてあげたいと思う。そんな 自分が少し照れ臭くもあったが……。 現実というのものはキビシイもので、考えても考えても何が良いのか思いつかない。 それも当然と言えた。11も歳が離れた男の喜びそうなものだなんて。 それに高耶と違って、直江は物に執着しない。だから一緒にいても彼が何を欲し がっているかだなんて、わかったためしがないのだ。 さて、どうしたものか。考え込む高耶をよそに日は暮れていく………。
「直江」 寝室のベッドに起きあがり、スケジュール帳を確認していた直江の元に、高耶が ひょっこり顔を覗かせた。風呂上がりの高耶の顔は上気しており、石鹸のいい匂 いが漂っている。 「高耶さん、上がったんですか?」 高耶の顔を認めたとたん表情を緩めた直江に、高耶は心の中で『よし!』と拳を 握ると、するりと身を滑らせた。 「何やってんだ?」 直江がいるベッドによじ登り、手元をのぞき込む。何をやっているかなんて聞か なくてもわかるのだが。 「明日の予定の確認ですよ。出張で大阪に行かなくてはならなくて」 「…そっか。大変だよな、お前も。今日も仕事だったし。……折角のGWなのにな」 「すみません。どこにも連れて行ってさしあげられなくて」 申し訳なさそうに頭を下げる直江に、高耶は慌てて首を振った。 「や…。べ、別に。謝ってもらうような事じゃ」 「でも、どこか遊びに行きたかったでしょう?」 う……、と詰まった高耶だったが、直江がいないのに一人で、ましてや他の誰か と遊びに行ったって面白いわけがない。だから本当にいいのだ、と言う高耶に、 直江は嬉しさと共にホッと胸を撫で下ろした。 「けど、連休ねぇのは辛いよな」 「えぇ、まぁ。でもこれも仕事ですから」 「よく割り切れんなぁ。オレだったらぶーぶー文句言うぜ。祝日ぐれぇ、きちっと休み てぇ」 「そうしたいのは山々なんですが、そうもいかないのが大人の世界なんですよ」 パタンとスケジュール帳を閉じて苦笑を浮かべる直江に、高耶は肩を竦めた。 「ふぅん。ご苦労なこったな」 「それより高耶さん。先ほどはご馳走様でした。私の為にあんな豪華な料理を作 って下さるなんて」 いろいろ考えた結果、高耶は直江に手料理でもってお祝いをしていた。先にも述 べた通り直江は仕事があったし、高耶が唯一自信が持てるものといったら、物心 ついた時から(しぶしぶではあったが)作っていた料理だったからだ。普段のあり 合わせの料理ですら喜んでくれる男の事だから、今まで作ったことのない、手間の かかる料理だったらもっと喜んでくれるだろう、そう思った結果であった。 むろん、プレゼントはそれだけではないのだが。 「べ、べつに。あんなの簡単だし。……それよりさ、これからなんか予定あんのか?」 「いいえ。明日の準備をするだけです」 「そっか、そうだよな」 明らかにホッとした様子の高耶に小首を傾げる。 「……高耶さん?」 なんだろう。高耶は思わせぶりにこちらをチラチラ見ている。「どうしたんですか?」と 尋ねると、高耶がガーッと怒鳴った。 「―――んだよっ。『どうしたんですか?』じゃねーだろっ」 わかるだろ? と唇を突き出す高耶。それにようやく高耶の言わんとしている事が わかって、直江は苦笑を上らせた。 「高耶さん。折角ですが今日は……」 「何で?」 「何でって、言ったでしょう? 明日出張だって。朝早いですから……」 「そんなん、お前いつも関係ねぇじゃん。どんなに次の日朝早くたって、バカスカやる くせに」 「………高耶さん」 高耶の身も蓋もない言いぐさに目眩を覚えるも、ここで負けるわけにはいかない 。連日の過度のスケジュールに、直江は疲労困憊になっているのだ。いつもだっ たら据え膳は必ず頂く男も、今日だけは勘弁して欲しかった。それでやんわりと 制止をした直江だったが、元気があり余っている高耶はドスッと直江の上にダイブ するとそのまま男を押し倒した。 「た、高耶さん」 「いいっていいって。エンリョすんなよ。お前は何もしなくていいから」 言いながらズボンに手をかけてきたので、直江は本気で慌てた。 「たかや、さんっ」 「んだよ。黙ってろよ。これもたんじょーびプレゼントのひとつなんだから」 (!? そうなんですか? 高耶さん) なんて嬉しいことを。ほろり……、と情に流されそうになって踏みとどまった。 イカン。高耶さんはすっかりノリ気だ。いつもだったらどんなに誘ってもなかなか了承 しないくせに。どうしてこういう時ばかり、俺の都合お構いなしにソノ気になるんだ。 高耶さんからのお誘いは嬉しいが、いかな俺だとて、時と場合による。 なんてシリアスに考えていたのに、高耶ときたら躊躇もなく直江のズボンを下ろし、 さらに下肢のものをぱっくりくわえてしまったではないか。 (うっ……、高耶、さん) 相手の都合に合わせないのは、直江の受け売りだろうか。 直江の意見なんて全く無視して、高耶は奉仕を始めてしまった。 高耶はとことんヤル気らしく、最初から飛ばしている。普段は渋るあんなコトやこんな コトまでされて、疲れ切っていたはずの体に熱が灯り始めた。 「……高耶さん」 煌々と照らされた部屋の中で、下肢だけを晒し、さらに高耶に思う様高められている 自分。 (これではまるで、いつもと反対ではないか) 羞恥はさほど感じないが、いつも高耶が感じている気分を少し、わかったような気が した直江だ。直江が高耶に「する」場合は当然こんなものでは済まされない。それこ そあの高耶が泣くぐらい、卑猥で野蛮に飛んだものなのだ。そう考えると、高耶が 普段どれだけ羞恥と戦っているのか、想像に難くない直江だった。だからといって、 やめる気はさらさら無いのだが。 その時の高耶の痴態を思いだし、更に下肢に直接加えられる愛撫によって、直江 のソコはみるみる大きくなった。高耶の舌使いは決して上手なものではなかった が、それが稚拙な分だけ、熱心さが伝わって直江を熱くさせた。口中に含んでいた 高耶には、それがすぐにわかったのだろう。高耶はいったん強く吸うと、含んでいた ものを口から出した。 唇が濡れたもので赤く色づいていた。それにコクと喉を鳴らすと、高耶が挑戦的な 笑みを浮かべた。 「直江、ヤリたいだろ?」 「……たかやさ…」 「待ってろ。今準備するから」 「え?」 言うと高耶はポケットから小さな容器を取り出すと、そのままズボンを下着ごと脱ぎ 去った。次いで容器から半液体の物を指で掬うと、あろうことか自分の秘部へと手 を伸ばしたではないか。 「た、高耶さん」 直江は驚いた。いつもの彼だったら絶対にこんなことしない。それだけ羞恥と屈辱を 感じる行為を、今、高耶は自分の為にしてくれているのだ。誕生日プレゼント? いいや、これはもはや、自分を愛しているからの行為に違いない。そうでなきゃ、 考えられない。 普段は隠されている全ての部分を晒し、羞恥と戦いながら娼婦めいた事をする高 耶がとても愛おしいと思った。そんなのはいいから、今すぐひとつになりたい。 (あなたの中に入り、思う様あなたを感じたい。感じさせたい) 高まる期待。腰間の物を震わせながら、高耶の淫らな行為を眺める直江はもはや 限界に近かった。手を伸ばし、強引にでも高耶に穿ちたいと思ったが、それでは 折角の高耶の気持ちが台無しになってしまう。例え、この待っている時間が拷問 に等しかろうと、直江は耐えねばならないと思った。 高耶は何度も指を出し入れした。一本が二本になり、やがて三本になると、その 表情に変化が現れ始めた。吐息を熱くし、頬を上気させそれでも動きをやめない 高耶は、直江よりも先に陥落しそうだった。直江に全てを見られている、という事実 が、より高耶を高ぶらせているに違いない。後ろの刺激だけで既に前は勃起し、 その先端から白いものを滲ませている。 きっと、今上着を剥けば、その下に隠されている胸飾りも赤く色づいているに違いな い。 思考が淫らに染まる。先ほどまで渋っていた自分はどこにいったのか。今はただ、 高耶の中に入りたい。それしか考えられなくなっていた。 「高耶さん…」 熱く掠れた声で呼べば、やるせなさそうに眉を下げた高耶が顔を上げる。 「なおえ……」 ![]() 通常では考えられない甘い声で返した高耶は、直江の肩を掴むと緩慢な動きで腰 を上げた。 今まで自分の指をくわえていた部分を直江に押しつける。 卑猥なくらい足を大きく開きながら、ゆっくりと刀身を埋め込んでいった。 「…アッ……、ふぅ…んっ」 苦しそうに眉を絞ったのは最初だけで、あとはすんなりと中に迎え入れた。 自分が今、とてつもなく淫らな格好をしていると、高耶は気づいているのか。直江の 首に手を回した状態で、高耶は奥深くまで男根をくわえ込んだ。 「……ぁ…、……な…ぇ」 「なんで、すか」 自分も息を乱して答えると、高耶は何度も唇を舐めながらこう問いかけた。 「……イイ……か…?」 キュッと絞られ一瞬体に痺れが走った。 直江は高耶の細腰を掴むと、軽く揺すりながら、 「えぇ。とてもイイ……。高耶さんも、もっと腰を振って。俺を絞って。俺に感じさせて」 目の前にある、胸の尖りに唇を寄せてみる。ペロと一舐めしてやると、それだけで 高耶はビクンと体を震わせた。 「アッ!」 「これも誕生日プレゼントの一つなんでしょう? 高耶さん。自分だけ気持ち良くなっ てしまっては、駄目じゃないですか」 くすくすと笑いながら、それでも舐めるのをやめない直江に、高耶はビクビクと体を 震わせる。けれど、直江の言葉は認識出来たようで、徐々にゆるゆると腰を動かし 始めた。自分の体重がかかっている分、いつもより深い所まで入り込んでいるはず だ。そんな苦しい状況で、直江の為に行為を続ける高耶はなんて健気なのだろう か。愛しくてたまらない。こうして一つに繋がっているというのに、更に独占したいと 思う。底なしの欲望だ。彼をそれこそ壊してしまいたいと思うくらい、彼と一つに溶け 合いたい。どこまでも深く繋がり、混ざり合って、一つのものになれば、この病的な 我執は消えるのだろうか。 (高耶さん……) 愛してる。 ―――あいしてる。 想いは形になって、高耶の中へと注ぎ込まれた。
小鳥の囀りで急速に意識が浮上した。 爽やかな目覚めは、初夏ならではこそ。 優しい朝の光を顔に受けて目を開けた高耶は、しばらくベッドの上でぼうっとして いた。 (オレ、どうしたんだっけ) まだ眠気が冷めない頭で考えてみた高耶は、次の瞬間ハッとした。 バッと布団をめくると、明らかに自分のものではないパジャマを着ている。 (なおえ) 咄嗟に起きあがった高耶は、酷い腰の痛みに一瞬固まったがそれよりも優先する ことがある。高耶は苦労して起きあがると、キッチンへと足を延ばした。 テーブルの上には朝食らしきものとメモが置いてあった。見れば、直江の走り書き と高耶の分の朝食ではないか。高耶より早く起きた直江が、出掛ける前に用意して いってくれたのだろう。直江の優しさと気遣いにに感動しつつ、彼に余計な負担を かけさせてしまったことを反省する。けれど、 (やっぱあいつは絶倫だったな) どうやら高耶の読みは当たっていたようだった。 あんな事を言っていて、結局最後に主導権を握ったのは男の方だった。まぁ、途中 から高耶が勝手に気持ち良くなってしまったのが悪いのだが。 (でも、喜んでくれてたみたいだな) あの時の事を思い出すと今更ながら羞恥で消え入りたくなるが、だからこそ贈った 甲斐があるというものだ。 滅多にしないからこそ、価値がある。 豪華な食事も、自分から誘ったのも。 眠りに落ちる瞬間に感じた、唇の感触と直江の優しい声が甦る。 ―――たかやさん、愛してる。 「直江……」 今頃直江は、寝不足の頭を抱えて新幹線に乗っている事だろう。そんな彼にメッ セージを送るが如く、高耶は直江のパジャマに唇を寄せた。 「どれ、オレは部屋の片づけでもすっか」 誰にも見られていないとはいえ、とてつもなく恥ずかしい事をしてしまったと自覚の ある高耶は、わざと大きな声を出した。 そんな高耶に、優しい朝のシャワーが降り注いでいた。 |
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