真実の行方


夏といえば暑いのが当たり前である。しかし、高耶と直江の愛の巣には、現代人の画期的な
発明品であるエアコンが、当然の如く設置してある。だから夜のお楽しみも一年中快適に営
める訳なのだが、最近になって高耶が誘いに乗ってくれなくなってしまった。
「何が悪かったんだろうか……」
直江は一人ソファに腰掛けると、頭を抱えてしまった。
高耶と行った、というか直江が一方的に高耶にした、アレやコレやを思い出す。更には高耶
にさせた、アレとかソレとかも思い出してみる。
……ううむ。
直江は考え込んでしまった。
どれもこれも初めこそ高耶は形ばかり嫌がってみせたが、最後にはとても気持ちよさそうに
していたし、自分から「あ、ぁん……、。な…おえ……もっとぉ…」と可愛らしい声と顔(←少し
直江の脚色が入ってます)で強請ってきてもいた。つまるところ、結果的に高耶は悦んでいた。
直江とのセックスが嫌だから、お誘いを断っているという訳ではないようなのだ。
高耶に嫌われていない、とも直江は断言出来た。昼間は至って普通だし、ぶっきらぼうながら
も甘えてくる時もある。確実に好かれているとわかる。だから本当に、夜のお誘いの時だけ
高耶は渋ってみせるのだ。
では、何故彼は拒むのだろうか。
考えても、答えなんてわかるはずもない。
知っているのは、当事者である高耶だけだ。
直江は「よし!」と決意をすると、今日こそ聞き出そうとバスルームに足を向けた。



シャワーを頭から浴びていた高耶は、直江がドアを開けたのに気がつかなかったらしい。
直江が近くまで寄ったところで初めて気がついた高耶は、驚いた拍子に足を滑らせた。
「うわっ!」
「高耶さんッ!!」
直江は咄嗟にガシッと高耶の腕を掴むと、そのまま自分の懐深く高耶を抱きしめた。洗い
流したシャンプー液で、どうやら滑ったらしかった。良かったと安堵の息を漏らす直江に、
バクバクと心臓を跳ねさせた高耶が直江に食ってかかった。
「な、なんなんだっ、テメーっ! イキナリ!! アブねーじゃねぇかっ!」
直江のせいですっ転びそうになったのだ。それは当然と言えよう。だが、
「おい、離せよっ」
いつまでもガシッと抱きしめている直江に、高耶は抗議の声を上げた。それに漸く少しだけ
腕の力が緩んで、ホッと安堵の息を吐いた高耶は、直江の格好を見て思わず固まった。
直江は腰にタオルを巻いたきりの姿になっていた。どうやら一緒に風呂に入るつもりらしい。
そう悟って、高耶がうっすらと頬を染めた。
「……オレ、もう上がんだぞ」
のぼせちまう、という高耶に、直江はにっこりと微笑んだ。
「まだいいじゃないですか。一緒に、……ね?」
そう言うと、直江は高耶の濡れた額にキスを落とした。そのまま唇を滑らせて、目尻にも
キスを落とす。柔らかな男の唇の感触に、高耶はくすぐったさから肩を竦めてみせた。
「〜〜〜おまえ、風呂入りにきたんだろ!」
「ええ。ですから一緒に入りましょう」
一緒に「風呂に入って」高耶がほやほやしたところで、拒否の理由を聞き出そうと考えて
いる直江である。高耶はこう見えて快楽に弱い。少し虐めてさえすれば、あっさりと口を割
るだろう。少々狡い手ではあったが、理由もわからないまま夜のお楽しみを奪われる事ほど
男にとっては辛い事はないのだから。
我ながらいい考えだと心の中でほくそ笑む直江に、高耶は予想通り抵抗した。
「オ・レ・は、もう上がるんだ!!」
そう言って直江を押しやろうとしたが、すかさず股間のモノを掴まれて高耶はビクッ! と体
を揺らした。
「コラッ!! つかむなっ」
ソコを弄れば陥落すると思っている、その安直さが頭にくる。構わず振り切ろうとしたが、力
強い腕で抱き込まれてしまい高耶は身動きが出来なくなってしまった。
「直江っ!」
高耶が怒りから顔を染めた。それをものともせず、直江は婉然と笑ったのだった。
「私が洗ってあげますよ。―――あなたの、全てをね」



暫く抱いていない体は、快楽に敏感になっていた。というか、高耶も本当はしたかったので
はないかと推測する。何故なら高耶の抵抗は最初だけで、あとは自ら直江にすり寄ってきた
からだ。
キスも、高耶から強請ってきた。
だから直江は、息も出来ないぐらいの強烈なディープキスをして、高耶を満足させた。
「…ふ、ア……。あぁ………」
愛撫もそこそこに、二人は繋がった。
直江はタイルの壁に高耶の手を付かせ、後ろから一物を挿入している。
温い温度に設定したシャワーが、柔らかく二人の頭上に降り注いでいた。いろんな物で全身
を濡らしながら、直江は愛しい人の体を揺さぶった。
「あ、あ、あ………」
高耶の足が萎えて、カクンと頽れそうになった。すかさず直江が抱き込んで、高耶を凭れか
けさせる。しかしそれは、直江に体重を預ける形になる。深く入り込んだオスが、高耶の敏感
なトコロに突き刺さり、高耶は大きく後ろに仰け反った。その態勢のままガクガクと揺さぶられ
て、たまらなくなった高耶は甘い悲鳴を上げた。
「んぁっ! アァ………!」
高耶の狭い肉筒を、男のペニスが乱暴に擦り上げていた。開きっぱなしになった穴に、不快
を催す暇もない。熱い楔に幾度となく貫かれて、高耶はハァ、ハァと荒い息を漏らした。
「なお…え…!」
我慢出来なくなって、高耶が自分のモノを握りしめた。それを見た直江が、屈伸を活かして
なおも下から突き上げる。
「アァ……! あぁ…、ん! も、う………!」
グッグッと入り込んだ穴の隙間から、最初に注ぎ込んだ白いものが滲み出てきた。高耶の前
のものも、爆発しそうなぐらい大きく育っている。
感じている高耶に、直江は快感を覚えざるを得ない。自らの行為で相手が喜ぶことほど、嬉し
いことはないからだ。
直江は一際高耶を大きく突き上げると、彼の体の中に精液を注ぎ入れた。



「大丈夫ですか、高耶さん……」
「うー…」
直江の呼びかけに、高耶は小さく唸った。真っ赤な顔をした高耶は、くたりとしてしまっている。
シャワーを浴びながらヤッたのがマズかった。途中で湯は止めたものの、風呂場で致してしま
ったせいで、行為が終わる頃にはすっかり高耶は逆上せてしまっていた。
快楽に溺れさせて、セックスを拒否する理由を聞き出そうと目論んでいた直江であったが、
その計画は見事に失敗に終わった。今まで抱かずにいられたのが不思議なぐらいだ。久しぶ
りの彼の肉に興奮して、すっかり夢中になってしまった。
溺れてしまったのは、高耶だけではなかったのだ。
とりあえず、赤い顔をしてクタリともたれ掛かる高耶を抱っこして、直江は高耶を寝室へと運ん
だ。
彼をこんな目に遭わせるつもりはなかったので、かなり落ち込みモードの直江である。
「高耶さん、高耶さん。しっかりして。今、水持ってきますっ」
高耶のぐったりした様子に、慌てて水を取りに行こうとする直江。だが……、
「待て……」
高耶が小さく声を発した。それに気がついて、直江は耳を寄せた。
「なんです? 何か他にいりますか……っ?」
高耶は、目を瞑ったまま何かを呟いていた。聞き取ろうと、直江は耳を澄ませた。
「何? なんです?」
「………とり……」
「………は? 鳥? な、なんです? 何が言いたいんですっ?」
耳を寄せる直江に、高耶は力無く呟いた。
「蚊取り…線香……つけてくれ」
「………蚊取り…?」
なぜここで蚊取り線香なのだろうか。
聞き返そうとしたが、高耶はもう限界だったらしい。ただでさえ行為をして疲れているのだ。
それプラス逆上せた事もあって、高耶はすーっと吸い込まれるように寝入ってしまった。
「蚊取り……。蚊取り……。蚊がいるのか?」
よもやこの部屋で(しかもセックス中に)、高耶ばかりが蚊に刺されているとは思わない直江
だった。
蚊はAB型の血を嫌い、O型の血を好む。さらに、体温の高い方に寄っていくという性質がある
のだ。ただでさえ高耶は直江より体温が高かったし、それでいて「運動」もしたとあっては、刺
されない方がおかしいというものだ。

直江といる事で、高耶ばかりが標的にされる事に難色を示し、この部屋でのセックスを拒否
していた高耶。
そんな事を知らない直江は、とりあえず蚊取り線香を出そうと部屋を後にしたのだった。




★ おまけ ★


「ところで高耶さん、ドコ刺されたんですか?」
「……!?」
その問いに、高耶はカッと顔を赤らめた。それで答えが出たようなものなのに、直江はつい
聞いてしまった。
「もしかして、……言えないトコロ? ピーとか、ピーとか。まさか、……ピーですか?」
!?!?!?
「―――死ねッ!!!」
「―――グッ!」
顔を真っ赤にさせた高耶の鉄拳が、直江の胸に吸い込まれた……。



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