| それでもきっと幸せ
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その日は、夕方から天気が悪かった。 黒い雲は凄い勢いで空を覆い、あっという間にその表情を変えた。 これは降ってくんな。 そう思ったものの、なかなか雨の気配はなく、とうとう降り出したの20時を過 ぎてからだった。 「あー、ついに降ってきたか」 誰に言うこともなく呟いた高耶は、立ち上がって窓の外を見た。 真っ暗な中に、時折走る稲光。 堰を切ったかのように降り続ける雨。 こんな時に、帰りが遅くなる同居人の運のなさに同情せずにいられない。 しかし、それはそれ。 待っていても仕方ないので、高耶は先に風呂に入る事にした。 直江が帰ってきた時に、すぐに中に入れるように、と考慮したからでもあった。 「フゥー、いい風呂だった」 肩にかけたタオルでごしごしと髪を拭きながら出てきた高耶は、脱衣所であれ? と思った。 「んだよ、忘れたか〜?」 考え事しながらだったのがいけなかった。 高耶はうっかり着替えを忘れてきてしまったようだ。 「仕方ねぇなぁ」 恐らく、風呂に入る前に立ち寄った、リビングに忘れたのだろう。 高耶はボリボリと頭を掻くと、そのままの状態で脱衣所を出た。 直江は帰りが遅いと言っていた。なら、このまま出ても支障はあるまい。 しかし、高耶はその浅はかさをすぐに後悔する事になるのだった。 フンフンフン〜と鼻歌を歌いながらリビングに入った高耶は、一瞬にして固まっ た。 目の前に、いるはずのない人がいた。 「な、直江っ」 「高耶さん?」 その声に振り返った直江は、同じく固まった。 「―――た、高耶さんッ! ああああなた、なんて格好しているんです!?」 そう言いながらも、目線はしっかり下に向いている。それに気づいた高耶は慌て てタオルを取ると、それで前を隠した。 「お、お前こそっ、何でいんだよッ!」 見てんじゃねぇ! とがなる高耶に直江も負けじと返した。 「何でって…。私の家なんだから、いて当たり前でしょう!」 「そうじゃなくてっ! おまっ、帰るの遅くなるって」 そうなのだ。長兄に接待につき合うようキツく言われたとかで、今日は帰りが遅 くなると言っていたのだ。こういう場合、本当に帰りが遅くなることは経験済み だったので、高耶は待たないで風呂に入ったのだった。 着替えを忘れたのは純粋なアクシデントだったが、まだ帰ってはこないだろうと あの格好でふらついた高耶に罪は(多分)ない。リビングまでは目と鼻の先で、 ちょっと行って着替えるのに僅かな時間しか要しないからだ。誰もいないだろう と、全開で行ってもまず咎められないだろう。 それなのに。 なんで、こいつがいる! 「あなたが待っているだろうと思って、急いで帰ってきたんです!」 え? そうなの? なんて喜ぶかー!! 「それより、あなたこそ何しているんですかっ。まさか、いつもそんな格好で家 の中を……!」 顔を強ばらせる直江に、高耶は顔を真っ赤にさせながら怒鳴った。 「バカッ! んな訳ねーだろがッ。これはたまたま、着替えを忘れてだなぁっ。 てか、いい加減服着させろよ。風邪ひいちまうだろ」 言い合っているうちにすっかりタイミングを逃してしまった高耶だった。未だ素 っ裸で居心地の悪い高耶は、とりあえあずパンツ〜と、くるりと背を向けた。が、 「待ちなさい」 ガシっと肩を掴まれて、高耶は動きを止めた。 「なんだよ」 「据え膳食わぬは男の恥。高耶さん、こちらにいらっしゃい」 だが高耶は一瞥すると、ペシっと直江の手を払った。 「ヤーなこった。どーせ、変な事考えてんだろ」 「わかっているのなら、早い」 直江はクク、と笑うと、高耶の手からタオルを払い落とした。 「テ、テメェっ」 唯一の身を隠すものを奪われて、高耶は慌てて前に手をやった。直江に裸体を晒 す事は初めてではないが、こんな状況では恥ずかしいだけだ。 「何も恥ずかしがることないでしょう? あなたの体なんて、もう何度も見ている んですよ」 ツ、と歩み寄って耳元に囁く。全裸ということもあって、高耶は過敏に反応した。 「ア…。ば、か……」 首を竦めた高耶に気をよくして、直江は後ろから高耶を抱きしめた。 腕の中の細い体が、僅かに強ばる。それに気がつかないフリをしながら、直江は そっと高耶の腕に触れた。 「上気した顔が可愛いですね」 耳たぶを噛みながら、ゆっくりと手を下げていく。前に添えられているだけの手 の上から自分のそれを重ねて、徐々に力を込めていく。 「なお……っ」 縋るように高耶が直江を仰ぐ。その高耶に優しく笑んで、直江はそれを下からす くい上げた、その時。 ピカッ!―――ゴロゴロゴロゴロッ。 激しい稲光と共に、雷鳴が轟いた。 どこかに落ちたのだろうか。 電気が消えてしまった。 「なっ…!? 落ち……?」 一瞬で我に返った高耶は、バッと直江の魔手から逃れた。それにチッと軽く舌打 ちしながら直江は顔を上げた。 「………どうやらどこかに落ちたようですね」 折角高耶をソノ気にさせかけていたのに、これでは台無しである。驚いた拍子に 腕の中から高耶は出ていってしまったし、雰囲気もぶち壊し。 くそっと歯がみしている直江に対し、解放された高耶は「パジャマ、パジャマ」 と手探り状態。どうやら、この機にパジャマ着てしまおうとしているらしかった。 それにはすっかり気を削がれたしまった直江だ。 仕方なく諦めることにした。 (成り行きのようなものだったし、仕方ない、か) それでも、ガクッと肩を落とさずにはいられない。高耶のアツイ体を触った後で は、このままだなんて悲しいだけだ。一方高耶はというと、ようやくパジャマを見 つけたようだったが、ソファの前に何か置いてあったのだろう。躓いてソファに 倒れ込んだ。 「いってぇ〜〜〜」 「だ、大丈夫ですか? 高耶さんっ。怪我しませんでしたか?」 稲光を頼りに高耶の側まで行った直江は、そこでウッと呻いた。高耶は文字通 り倒れ込んでいたのだが、その姿勢がいかんせん悪かった。何度も言うが、今 の高耶は全裸なのだ。その状態で臀部を突き出された日には、どこかの狂犬 が暴走しても文句は言えない。 (た、高耶さんッ!! 誘っているんですかっ!?) 「高耶さんッ!」 ガバッと抱きつくと、驚いた高耶が手を振り上げた。 「わわっ! こ、コラっ! 何してやがるっ。退け!!」 大きくて重いものにのし掛かられた高耶は、たまったもんじゃない。どうにか逃 れようと体を起こしたはいいが、高耶はその行動をすぐに後悔する事になった。 直江の手が、前に……! 体を起こした事により出来た隙間を利用して、直江が手を潜り込ませてきたのだ。 「アッ……!」 いきなり握られて、高耶が声を上げる。無防備になっていたところを捕まれて、 思わず反応してしまったのだ。 「な、直江」 焦って右手でバシバシ叩いてみるが、発情した犬に制止は利かない。そうこうし ているうちに、扱きだされて、高耶はあられもない声を上げた。 「こらっ、直江。ヤメロって……。バカ! 離せ、よ」 折角魔の手から逃れたのに、これでは元の木阿弥である。 「バカ! アホ! 離せ、エロジジイっ」と思いつく限りの罵声を浴びせるが、それ で止まれば直江ではない。 「あなたがいけないんですよ。だいたい、そんな格好でフラフラするもんじゃない」 「ア……、だ、から! これはたまたまだって…」 「たまたまでも何でも、親しき仲にも礼儀ありという言葉が、あるでしょう。まぁ、 あんな高耶さんなら、私は大歓迎ですが」 興奮しているのか、直江の息も荒い。 「ば、か……」 「たまには、こういう所もいいんじゃないですか? ほら、……感じてるの? もう勃ってる」 その言葉に、高耶の顔がカァッと赤くなった。直江の言うとおり、そこは直江に 可愛がられて形を変え始めていた。 「な、おえ」 「折角お風呂に入ったのに、また、後で入るようですね」 「だったら、やめれば、いいだろッ」 くすくすと笑われ、高耶は羞恥から噛みついた。が、ヌル、と先端を撫でられて、 高耶は身を強ばらせた。ヤバイ…。もう……! 「まぁ、いいじゃないですか。後で入れてあげますから。まずは、ね」 グリグリと割れ目を弄られて、呼気が乱れる。こんななし崩しになんて嫌だった が、直江の手が与える快感は耐えようもなく。感じてビクビクと体を震わせなが ら、高耶は直江の手の中でイッてしまった。 「あっ……ハ、ァ……」 こんな所で、と思ったが、解放した今はもうそんな事どうでも良かった。 (きもち、イイ……) 悔しいけれど、それは事実で。けれど、そんな事当然言えるはずもなく、代わり に高耶は毒づいた。 「も…、サイテー……」 疲れた体を投げ出す高耶に微笑んで、直江は己のものを取り出した。 「でも、気持ち良かったでしょ? ココがビクビクいってますよ。待っていて。今、 入れてあげるから」 「なおえぇ!」 怒鳴ったところで聞き入れられる訳がなく、結局その場で餌食になってしまった 高耶であった。 そんな事があって、しばらくは着替えを忘れないようにしていた高耶だったが、 何かの拍子に忘れてきてしまう事もあって。 毎回毎回都合良く直江が外出している訳もなく、やはり食べられてしまう高耶 なのであった。 |
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