直江が会社の研修で家を開けてから、10日が過ぎていた。
何かとベタベタしたがる直江がいないという事で、最初は清々としていた高耶
だったが、ここにきて少し調子を狂わせていた。
一人きりの食事に、一人きりの就寝。
がらんとした室内に、わずかに残る男の匂い。
寂しい、とは思いたくなかった。たった10日間離れているだけで、こんな風に
思ってしまう自分が女々しくて、それだけはどうしても認めたくなんかなかった。
あいつに出会うまでは、ずっと一人だった。
何にも頼らず、自分の力だけで生きてきた。その高耶が誰かを、―――直江を
欲しているだなんて、そんなのある訳がない。毎日かかってくる電話の男の声
に安らぎを感じていたなんて、思いたくない。
けれど、やっぱりそれは意地を張っていただけだったと、高耶は思い知らされる
のだった。
甘い夢を見ていた。
とても心地よくて、とろとろととろけてしまいそうなくらいの甘い夢だ。なぜこれが
夢だとわかるのかというと、あいつはまだ、研修先の静岡にいるからだ。だから、
これは夢だ。高耶の本能が見せた、淫らな夢なんだろう。あいつにも言えない、恥
ずかしい夢……。
自分がどうなっているのかなんてわからなかった。
ただ、下肢から這い上ってくる快感が凄まじく、羞恥も忘れて高耶は甘い声を上
げていた。
「…アッ……! ふ……」
(気持ち、イイ…)
捕らえられた部分が、気持ち良くてたまらない。
男の舌が、高耶の屹立した肉の棒に絡みついていた。
それは高耶の快感を導き出そうとしているのか、とても熱心に這いずり回ってい
る。
嫌悪は感じなかった。
それよりももっとして欲しいと、高耶は腰を揺らした。
ここには高耶しかいない。声を出しても、恥ずかしいことなんてないんだ。その
安心感からか、高耶は本能のまま声を上げていた。
「んぅ……! あっ、あぁ……!」
抑えることをしない声は、とても大きくそして恥ずかしい声だった。そんな自分に
羞恥を覚えるも、下肢から這い上ってくる快感に次第にどうでもよくなった。
流れる汗。
激しくなる息づかい。
そして甘い声。
限界が近い。
高耶は股間に顔を埋める男の髪を掴んだ。
もうイきたい。イきたくてたまらない。
「×××、もう……!」
叫んだとたん、先端を舌で穿られた。
強すぎる刺激に、高耶の意識は一気に霧散した……はずだった。
「………え?」
しばらく、高耶は呆然としていた。
目を開けたら、そこに男がいたから。
「あれ……? 直江…」
「目が覚めましたか。高耶さん」
そう言った男の顔が、どこかひきつっている。なんだろうと下に視線を転じて、
その光景を見て高耶は固まった。
「なっ……!!」
いつ間にか、高耶のジーンズが膝の辺りまで脱がされていた。もちろん下着も一
緒だ。
股の内側が湿っていた。それに、この独特の臭いは……。
悟った高耶の顔が、カッと赤く染まった。
「ババババ、バカっ、直江! なにしてやがんだッ」
高耶は怒鳴ると、慌てて両手で股間を隠した。
今更だろうとなんだろうと、この状態を男の目の前に晒しておくことが耐えられ
なかったのだ。
「なにって……、ただいまの挨拶を」
そう言って、ちらりと高耶の下肢を見る。それに、高耶は今度は怒りのために顔
を赤くした。
「!? バ、バカか! おまえはっ!!」
バンバン! と直江の頭を叩く。
「信じ、らんねェ! この外道!! 変態!!」
「た、高耶さん、なにもそんなに怒らなくてもいいじゃないですかっ。10日ぶり
に研修から帰ってきたんですよ、私は」
「だから、なんだっていうんだッ! ってか、おまえ、帰ってくるのは土曜日だ
って言ってだだろ!? なんでいるんだよ!」
「おや。お言葉ですねぇ。早く終わったからって急いで帰ってきたというのに」
「それならそれで、電話ぐらい入れろよ! なんで急に帰ってくんだよッ。それに、
こんな……」
股間を隠しながら、カッと顔を赤らめる。この状況から見て、さっきの夢は半分
現実だったという事なのだろう。夢だと思ってあんなに声を上げて乱れたという
のに、全部こいつに聞かれた。恥ずかしい姿も、恥ずかしいトコロも。
全部……。
そう思うと、どうしうよもない羞恥でいたたまれなくなった。
「ひ、久しぶりだからって、こんな……! 寝込みを襲うなっていつもいってるだろ
うが!?」
キレる高耶に男は宥めるどころか、言ってはならない事を口にした。
「……あなたも、悦んでいたくせに」
ブチ!
高耶の堪忍袋の緒が切れた。
「こンの、駄犬が……!! ええい、離れろっ! 寄るんじゃねェ! オレに触
るなッ」
「高耶さんッ!? ちょっ、待って下さい! 高耶さん。すみません。悪ふざけが
過ぎました。……謝ります。謝りますからっ」
「うるっセェ!」
激昂する高耶に、いよいよ直江はマズイと思ったのだろう。必死になって謝って
くるが、許してなんてやるもんか!
直江の弁解も聞かず、高耶は寄るな、触るな、を繰り返した。
ここで許してやったら、クセになる。
しつけは最初が肝心なのだ。
高耶は怒りのまま直江を叩き倒すと、下りたままのジーンズと下着を引き上げて
部屋を後にした。
その時のキツ〜イ灸が効いたのか、直江はその後もしつこく謝ってきた。
けれど、高耶が折れることはなかったという…。
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