weak point


「あ…っ、……ん……ふ…」
顎を捕まれ、舌を口内の奥深くまで差し込まれた高耶は、苦しい息の中どうにか息を
ついた。男の蹂躙は激しく、かつ強引で、ついていくのがやっとだ。
嫌がって突っ張った手は、だが、すぐに男の背へと回った。
「んーっ! んぅ……」
苦しさから、高耶はギュッと男のシャツを握った。キスをされてから、満足に息をついて
いない。このままでは感じる前に、苦しくてどうにかなってしまいそうである。
「……な、お…」
キスの角度を変えた時に出来る、僅かな隙間を利用して男の名を呼ぶと、漸く直江は
唇を離してくれた。
「ハァ…ッ、…ハ…ッ」
肩で息をする高耶は、無意識のうちにシーツを足の爪で掻いていたらしい。幾重にも
出来た皺が、高耶の苦しさを物語っていた。それを見た直江は、
「高耶さん。足の爪が伸びているようですね」
「……え?」
キスだけで半ば朦朧となっていた高耶は、ぼんやりと返事をした。
(つめ…?)
そういえば、最近切っていなかった気がする。直江の言うとおり、伸びているだろうと
思う。けれど、今そんな事を言われたからといって、切る気にはなれない。
「んなの後でいいって…」
それより続きをして欲しいと暗に言ったのだが、直江は何かを考えるとベッドを降りて
しまった。
「直江?」
まだ衣服も乱されておらず、キスをしただけではあったが、高耶の体は高まりつつ
ある。このまま放っておかれるのは少し辛い。
「直江っ」
抗議するようにもう一度呼ぶと、引き出しを探っていた直江がギシ、とベッドの上に
上がってきた。その手には、爪切りが握られている。
「え―――? って、オイ!」
まさか、ここで今、爪を切るのか?
そう凝然と見る高耶の足下に直江は座ると、徐に高耶の足首を取った。
「…うっわ、マジかよ、直江!」
さすがに、甘い余韻に浸っている場合ではなかった。
マジで爪を切ろうとする直江に、高耶は慌てて上半身を起こそうとした。けれど、
「あなたは寝ていてください。切ってあげますから」
「けど……!」
直江は有無を言わさず親指をグッと掴むと、パチン! と爪を切り始めた。こうなって
は、後は任せるしかなかった。やめろと言っても聞き入れてもらえないだろうし。
高耶は「はぁ…」とため息をつくと、直江のしたいようにさせた。
だが……。
パチンパチンと爪を切られているうちに、段々高耶は落ち着かなくなってきた。
普段は触られない場所を、人に預けるというのはこそばゆいものだ。しかも丁寧に
爪を切っていく直江に、焦れったいものも感じる。早く終わらせて先ほどの続きをして
欲しいのに、わざと直江は爪切りを引き延ばしているようにも思える。いつまでも無防
備な足を捕らわれているのは、今の高耶には辛いものがあった。
「直江…。まだなのか?」
爪を綺麗に整える直江に、イライラが募る。そんなに綺麗にしなくてもいいのに。普段
はもっと雑に切っているのに。と、寝ころびながらピクピクと指を動かしていると、ふい
にそこが濡れた感触がした。
「…うわッ!?」
驚いて足下を見ると、なんと、直江が親指を口に含んでいるではないか。あまりの事
に、高耶は思い切り足を引いた。
「バッ…! きたねーだろうがっ、んなとこ!!」
「汚くなんか、ない」
直江は真顔でそう言うと、グイと高耶の足を引き寄せて再び指を口に含んだ。生暖か
い口内に包まれた高耶は、ビクッ! と体を揺らしてしまう。くすぐったいのが一番で、
その次に官能を感じていた。
(う、嘘だろ!)
こんなトコ、感じるなんて思わなかった。
けれど、口内に指を含まれたり、指と指との間を舌で嘗められたりすると、思わず体が
ビクついてしまう。太股には力が入るし、ベッドの上に投げ出している手は無意識の
うちにシーツを掻きむしっている。そして、明らかに乱れ始めた呼吸に、高耶は自分が
感じている事を痛感せずにいられないのだった。
(くそ……! こんな…っ)
生殖器を嬲られている訳でもないのに、感じてしまう自分が恥ずかしかった。しかし、
高耶の心境を知ってか知らずか、直江の指への愛撫はやまない。すっぽりと口に含
んでは舌をツツ…、と滑らせる直江に高耶はゾクゾクとしたものが背筋を這い上って
きて、咄嗟に足を振り払おうとした。しかし、そうする事によって直江を傷つけてしまう
可能性が大いにあった。力の強い足で直江の繊細な場所を痛めつけてしまう事にで
もなったら…。そう思うとそれ以上の事は出来ず、高耶はしぶしぶといった風に足を
下ろした。
「もー、早く切れよっ。んなトコ、嘗めてばっかいねーで!!」
むくれながらそう言うと、漸く口を離した直江はくすっと笑った。
「―――そうですね。高耶さんはもっと違うところを、嘗めて欲しいみたいですし」
そう言う直江の目がドコを見ているかを知った高耶は、自分の浅ましさにカーッと顔
を赤らめた。
「こ、こ、これはだなぁ…っ」
「わかってます。感じちゃっんたでしょう?」
「!」
「ふふ…。可愛い人だ」
「!? かわいい、言うなっ」
「そんな事言っても、本当に可愛いのだから仕方ないでしょう? さあ、早く残りも
切ってあげましょうね」
そう言って、再びパチンパチンと爪を切り始める。それにホッとした高耶だったが、
またすぐに落ち着かなくなった。今度は純粋に爪を切っているだけだというのに、
直江に指摘された部分が徐々に熱く堅くなってきた。爪を切られているだけなのに
反応してしまう自分に、高耶は「信じらんねぇ!」と心の中で叫んだが、そうしている
うちにも顔が熱くなり、息がどんどん乱れていく。
(くそ……!)
悪態をついてもダメだ。
直江が足の全ての爪を切る頃には、高耶の股間はハッキリと隆起していた。
「ふッ…! …ん…ッ……」
堅いジーンズの下で、高耶の男が立ち上がっていた。苦しかったけれど、恥ずかしく
て、直江の前で取り出す事なんて出来やしない。どうする事も出来なくて、ぐったり
してしまった高耶のファスナーに手を掛けた男は、持ち主を無視して下半身の衣服
を剥いていく。煌々と明かりが点いた下で恥ずかしい場所を暴かれた高耶は、目元
を赤く染めながら直江を睨んだ。
「なおえぇ…」
「そんな顔しないの。気持ちよくしてあげるから」
直江は高耶の内腿をグッと押さえつけると、半立ちになっているペニスを口に含ん
だ。
「んっ! んん…っ!!」
足の指を含んだ時とは比べられないほど、高耶の反応はいい。腰を揺らして自ら
直江の口内を出し入れする高耶は、誰の目から見ても淫らだった。
「あ、ん…! アァ……!」
ギュッとシーツをわし掴みんで、腰を揺らす高耶。快楽の虜になったのは、一目瞭然
だった。
直江は高耶を口に含みながら、陰嚢を右手で揉み込んでやった。
「んふ…! あぁ…」
高耶の、切ない声が部屋に響きわたる。とても気持ちがいいのだろう。口の端から
唾液を垂らし、茫洋とした目で激しく体を揺らしている。
直江は器用にTシャツを捲ると、胸元で立ちあがっている赤い粒が見えるようにした。
徐に高耶の手を取り、立ちあがっているち乳首に導いてやる。
「私はココを弄ってあげるから、そっちは自分でやって下さいね」
そう言うと、高耶はイヤイヤをするように頭を打ち払った。そんな恥ずかしいこと、
出来るはずがない。けれど、今まで弄られていた下の部分への愛撫が止まってしま
って、高耶は不満そうに眉を寄せた。
「な…おえ」
「上は自分で弄って。上手く出来たら、下も弄ってあげる」
「!」
その、悪魔のような囁きに、高耶は怒りの眼差しを向けた。今まで散々下を弄って
いたくせに急にそんな事を言い出す男に、高耶は憤りを感じたのだ。
「直江っ」
「そんな顔をしてもダメですよ。上を弄らなければ、下も弄ってあげません」
「……っ」
直江は本気のようである。
ピタ、と動きを止めてしまった直江に、高耶は悔しそうに唇を噛みしめた。
「……ん、ふ」
高まった体が、無意識のうちに甘い息をつかせる。
もうイきたかった。イきたくてイきたくて、仕方ない。しかし、弄ってもらう為には、自分
で乳首を弄らなければならない。
「……くそっ」
高耶はなんとか我慢してやりすごそうとしたが、そんな事をしても熱が冷める訳でも
ない。むしろ無防備な自分を男の前にさらけ出しているこの状況に、ますます体は高
まっていくだけだ。
「………」
高耶は焼き切れそうな羞恥の中、おずおずと指を動かした。
堅く凝った乳首を転がす度に、股間のモノに響くものがある。
「う……、ふ…!」
顔を真っ赤にさせて、自分の胸を弄り出した高耶に直江は微笑した。感じるからなの
か、それとも恥ずかしいからなのか、高耶の動きは緩慢だ。だが、その「慣れてない」
様子が可愛くて仕方ない。直江は高耶が素直に応じた事により、漸く動きを再開した。
だが、それは高耶の待ち望んでいたものではなかった。
直江は高耶の焦れったくて仕方ないものには手を触れず、後ろの入り口に指を含ま
せたのだ。
「んっ! んんっ!!」
高耶の先走りの雫と、先ほど直江が濡らした唾液が、潤滑油の代わりになった。
狭い入り口を、太い指が強引に突き進む。
目が眩むような快感が、高耶の体を駆けめぐった。
「あっ、あっ……」
高耶が少しでも反応した場所には、直江は入念に指を擦りつけた。そうすると高耶
がとても淫らな顔をして喘ぐので、直江は何度も何度もそれを繰り返した。その結果、
前はずっと放っておいたままだったというのに、第二関節までズブリと刺した直江に、
高耶は背を撓らせて達していた。
「あぅっ…、あっ、あぁ……!」
ヒクヒク、と恥穴が直江の指を締め付ける。その柔らかな腸壁に歓待されていると
知った直江は、スラックスのファスナーを引き下ろし、日本人にしてはビッグなモノを
取り出した。そうして荒く喘鳴する小さな穴に、先端を潜りこませた。
「んぅ……!」
期待から、高耶が乾いてしまった唇を嘗めた。その淫靡な表情にゴクリと唾を飲み
込みながら、直江は自慢の楔を挿入していった。
「…ふっ……んん…!」
高耶の両足を高く掲げて、直江は律動を開始する。
ぐちゅ、と泡が立つような音が淫らだった。
深く足を折り曲げられ、やや乱暴に揺すられる高耶は、快感に瞳を潤ませる。
「あ、ぅあ―――…」
唾液を零しながら、高耶が必死に男の背をかきむしる。
そうしてヒクヒクと恥穴を収縮させながら、来るべき頂点に甘く切ない声を上げた。




気が付くと、辺りは真っ暗になっていた。
なんか暑いと思ったら、男の腕に抱きしめられていた。
高耶は先ほどまでの痴態を思い出して、カッと顔を赤らめた。足の指だけで感じて
しまった自分が、なんだか酷く淫らな気がして、恥ずかしくて恥ずかしくて、穴があっ
たら入りたいぐらいだった。
(チクショウ……)
そんな思いをしたのも、全てはこの男のせいだった。
こいつといると、自分は底なしに堕ちていく気がする。
そう思うと無性に直江が憎らしくなって、高耶はモゾモゾと体を動かすと、漸く取り
出すことが出来た手で直江の背中に長い爪痕を残した。
「うぅ……っ」
高耶を抱きしめながら寝ていた直江が、くぐごもった声を上げた。
それに少しばかり溜飲を下げた高耶は、漸く安らかな眠りについたのだった。



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