Wonderful Life


あの人が、欲しいと言ったから。
だから、誕生日プレゼントとしてあげたのに。
こんなのは酷い。酷すぎる。それともあなたは全てを計算した上で、私にアレが欲しいと言った
のですか!? 初めから、そういう意図で…。
誕生日と言えば、恋人同士にはもちろん外せない一大イベントだ。
相手が生まれてきてくれた事を心から祝い、そして出会わせてくれた運命に感謝を捧げる日。
相手が望むことなら、何でも言うことを聞いてあげる。アレが欲しいと言えばどんな高価な物
でも買い与え、どこどこに行きたいと言えば、車でも新幹線でも飛行機でも、はたまた船でも
何でも手配してあげる。あなたが喜ぶ顔が見たいから。太陽のように眩しい笑顔で、「直江、
サンキュッ!」って、短いけれどあなたの感情がいっぱいに詰まった表情で、礼を言ってくれ
るあなたが見たいから。7月23日は何でも言うことを聞いてあげる。欲しいものは何でも買っ
てあげる。そう思っていたからこそ、アレをプレゼントしてあげたのに。
こんなのは酷い。酷すぎる。
こんな結果、俺はほんの少しも望んじゃいなかった。
あなたに、喜んでもらおうと思っていただけだったのに。
それだけだったのに。
「高耶さん、本当は俺の事、あまり愛してくれていないんですかッ!?」
そう、愚痴ってしまってももはや仕方ないだろう。
何故なら…。





「……ワッ! コラッ!」
そう言って、背中に飛びついてきたトラ猫を高耶はベリッと引きはがした。トン、とソファの上
に着地する猫を抱き上げ、胸の前で抱いてやる。猫は、高耶の腕の中が心地よいのか、さ
して暴れもせず大人しく納まっている。くりくりした目でキョトンと見上げてくる猫の様子に、高
耶の母性本能(?)が擽られたらしい。
「か、かわいー!」
そう叫ぶと、ウリウリと小さな頭を撫でた。
にゃー、と小さな声で鳴く猫に、高耶はメロメロだ。
もともと猫好きな高耶である。けれど、今まで猫を飼った事も無ければ、日常生活で猫に触
れる機会も、出会う機会も皆無に等しかった。高耶にとって猫という生き物は(猫に限らず
ペット全般と言えるが)、遠い存在で現実に関わる事はまず無いと思っていたものだ。飼い
たい気持ちはあったが、飼うまでの環境を整えるのが大変だし、何より大事なペットの命が
尽きた時の事を考えると、とても側に置こうという気はしなかった。けれど、欲しいものは欲
しいもので。
一生に一度ぐらいは、猫を飼ってみたいなぁと思っていたのだった。
そんな時だった。直江に誕生日プレゼントに何が欲しいか、と尋ねられた。
「プレゼント? 別にいらねーって」
「そう言わずに。何でも言って下さっていいんですよ」
そう言ってニコニコと笑う直江。反して高耶の表情は少し曇りがちだ。
「けど、別に欲しいものなんて…」
直江には、普段から随分甘えてしまっている。それなのに更にプレゼントを貰おうだなんて、
幾らなんでも悪すぎる。それに、口にしている通り、欲しい物も特には見あたらなかった。だ
から、高耶はプレゼントなんていらねー、と言ったのだが、直江はなかなか引き下がってく
れない。直江としては、愛しい高耶に何かしてあげたくて仕方ないのだろう。そんな彼の気
持ちはよくわかるし、無碍にするのも申し訳ないような気が……してくる高耶だ。こんなに「高
耶さん高耶さん」言われてしまっては。
けれど、金のかかるものなんて…、と考えていた高耶は、ふと、猫の存在を思い出した。二
人が暮らすマンションはペット厳禁だ。いくら所有者が直江の実の兄とはいえ、規則は規則。
ペットを飼うことは出来ない。という事は、直江に「ペットが欲しい」と言っても、直江がペット
を買ってくる事はあり得ないという事だ。けれど、高耶が欲しがっているものは、猫である。
「猫が欲しい」と言えば直江は何とか出来ないものかと奔走するだろう。が、直江にも弱点
はある訳で。
身内にはとことん頭の上がらない直江だ。長兄に掛け合ってみても、言いくるめられて実現
は出来ない事だろう。直江は何か別のもので代用出来ないかと提案してくるかもしれない
が、高耶が「猫しかいらない」と言えば、もうどうにも出来なく……。つまるところ(チッ、思わ
ず直江並みに回っちまったぜ)、直江は高耶の欲しい物を用意する事は出来なく、それは高
耶にとっても都合のいいものになる、という計算になる。
「にゃんこ以外なんていらねー」って言えば、直江もプレゼントの代用はしたくても出来ない
だろう。高耶に受け取る意志が無いのだから。つまり、今年の誕生日プレゼントは、無しって
事で。
高耶は心の中で、しめしめと笑うと、
「そうだなー…。猫。猫が欲しいな」
「猫? ですか…」
直江が意外という顔をした。
「しかし…」
と、考え込む直江に、高耶は慌てたように言った。
「あ、別に無理ならいいんだぜ。マンションじゃ飼えねーだろうし」
「別にいいんだ」、と言う高耶に、直江は「ですが、」と続けた。
「あなたは、猫が欲しいんでしょう?」
「……まぁ、まあな」
猫が欲しいのは事実だ。だから、どっちに転んでも高耶にとっては都合がいい事になる。
「…わかりました。検討してみます」
「や、無理ならいいんだぞっ」
「大丈夫。何とかしますから」
そう言ってニッコリ笑うのは、高耶にガッカリさせない為か。
そんな事を考えて、高耶は少しだけ胸の奥に痛みを感じた。


しかし、そんな後ろめたさは杞憂に終わるのだった。


後日、高耶が学校から帰ると、「ニャー」と可愛らしい鳴き声を上げて、走ってくる猫を高耶
は見た。
「えっ!? あれっ? な、なんで???」
猫は高耶の前で立ち止まると、不思議そうに見上げてきた。そのままチョイチョイと前足で
口元を掻く愛らしい姿に、高耶はガバッと抱きついた。
「にゃんこー!! かわ、かわいー!!」
毛がふさふさで、生身の体温を持っている猫は、高耶の首筋に顔を埋めてモゾモゾと身じろ
いでいる。そんな小さな動きにも愛しさが募って、高耶はかいぐりかいぐり可愛がった。
「おう、にゃんこー。どうしたんだよ、おまえ。なんで」
と、話しかけていると、微笑みをたたえながら直江が側に寄ってきた。
「高耶さん。お約束の猫ですよ」
言外に、あなたへの誕生日プレゼントです、と含ませる直江に、高耶は「え?」と顔を上げた。
恐らくそういう事なんだろうなぁとは思っていたが、でも、どうして。このマンションはペット厳
禁なので、飼うことは出来ないのに(それを見越して猫が欲しいと言ったのに)。
「え? っても、ここってペット厳禁じゃ」
「何。ペットを飼えるようにする方法なんて、幾らでもありますよ。―――特に長兄の場合は」
と、急に声音を変える直江に、高耶がビクッと体を揺らした。
「えっ?」
暗に、兄を脅して不可能を可能にしたと言ってのける直江に、高耶はうすら寒いものを感じた。
(こ、こいつ、照弘さんの女性関係を盾に取ったな)
直江信綱、敵には回したくない男である。
「そ、そうなんだ〜。でも、マジいいのかよー」
小さな頭をナデナデしながら言う高耶に、直江は微笑みをますます濃くした。
「えぇ。了承済みです。心おきなく猫が飼えますよ」
「ふーん」
まさか、本当に猫が飼えてしまうとは。
ダメだと見越して言った事だったので、胸中複雑だ。しかし、腕の中で可愛らしい鳴き声を
あげる猫に、高耶はすっかり骨抜きになった。
「へへ。かわいーな」
床に降ろしてやると、猫は高耶の周りを歩き始めた。わざと体を擦り寄せてきたりして、本当
に可愛らしい。猫の方も、高耶が気に入ったらしかった。
「気に入ってもらえましたか?」
「あぁ! ありがとなっ」
「いいえ。あなたが喜んでくれるのなら」
そのまま高耶にキスしようとした直江だったが、悲しいかな、その手は空を切った。
「……あれ? た、高耶さん」
高耶はしゃがみ込むと、寝そべってしまった猫にちょっかいを出している。直江が高耶にちょ
っかいを出す前に、高耶が先に猫にちょっかいを出してしまった。しかし、今日が初対面なの
だから仕方ないだろう。そう思って、直江は苦笑するに留めておいた。
(可愛い…)
猫とじゃれる高耶を見て、可愛いと直江は思った。
高耶も念願の猫を貰って嬉しそうだし、そんな高耶を見ることが出来た直江も嬉しい。
直江は猫をプレゼントする事が出来て、本当に良かったと思った。
(これで誕生日当日もバッチリ!)←何が?
二人だけの甘い夜を想像して、直江はニヤニヤした。
高耶のご機嫌は充分に取れた。これなら、誕生日当日も高耶とイチャイチャする事が出来る
だろう。そう思って一人ニヤニヤしていたのだが―――。
誕生日前日になっても、誕生日当日になっても高耶は猫ばかり構っていた。
これは正直計算外だった。
直江が話しかければ少しは相手をしてくれるが、猫が「ニャー」と一鳴きすればすぐにそっち
のけ。当然濃密な時間も送れない。
(こ、こんなはずじゃ……)
高耶に喜んでもらおうと思って骨を折って(?)プレゼントをしたというのに、これでは報われ
ない気がする。むろん、ここでいう「報われない」とは、直江の個人的事情の方だ。
誕生日前日から当日にかけて、ムードを高めて甘く濃厚な一時を過ごそうと考えていたの
に。後からやってきた猫に、全てをかっさらわれてしまうとは。
「た、高耶さん! 私の話をちゃんと聞いて下さい!!」
どうにか甘いムードに持っていこうと頑張っているのに、高耶は先ほどから生返事ばかりして
いる。
そりゃ、2メートル近い男より、小柄な猫の方が可愛いだろうけれど。
(けれど、こんなのはあんまりです!)
肩の上に猫を載せたまま、「あ〜?」と返事する高耶。
その事からも、高耶の優先順位は直江より猫の方が上になっていると言える。
「なんだよ。聞いてっだろ、ちゃんと」
なぁ、と、ここに来て、またも猫を可愛がる高耶に、直江の不満は爆発した。
あなたの笑顔が見たくてプレゼントした猫だけれど、こんなのは酷い。酷すぎる。
(私より猫を優先するなんて!!)
直江の目がスッと眇められた。
もはや、可愛さ余って憎さ百倍である。
「…そうですか。聞いてたんですか。じゃあ、心おきなく」
「あ? 直江? ―――ワッ!」
いきなりソファベッドに押し倒されて、高耶が慌てたように声を上げた。直江は素早く背もた
れをリクライニングさせると、高耶の上に覆い被って身動き出来ないようにした。
「直江っ!」
突然の事に、怒る高耶。だが、直江は不敵に笑うと、
「私の話をきちんと聞いていたんでしょ?」
「はぁっ!? 何を…」
「聞いていたって、さっき言いましたよね」
そう畳み掛けるように言うと、高耶がグッと詰まったのがわかった。
直江には「聞いてた」と言ったが、実は殆ど聞いてなかった高耶だ。だから、直江にこう出ら
れると弱いのだ。しかし、聞いてないと言えば、どんな目に遭わされるか。
「き、聞いてたってっ。聞いてたっ。やだな〜、直江ってばよッ。……目、マジだぜ?」
ひくひく、と口の端を引きつらせながら言う高耶に、直江はズイ、とのぞき込んだ。
「だったら、抵抗するのは間違ってますよね」
「! えぇぇっ!?」
(な、なんだよ、直江のやつ。ここでヤりましょうとか言ったのかよっ)
聞いてない高耶は、しどろもどろ。
知らないうちに、「そういう事」になってしまったのだろうか。
「あ、れ? そうだっけ。おかしいなぁ。ちゃんと聞いてた気がしたんだけど」
ワルイワルイ、と笑って誤魔化そうしたが、それよりも早く唇を塞がれて言葉を発する事が
出来なくなってしまった。
(―――んっ! ハ、…ァ)
「高耶さん」
直江は高耶の首筋に顔を埋めると、Tシャツの裾から手を滑り込ませた。
男の熱く堅い手の平を胸元に感じて、高耶が「んっ」と息を呑んだ。
「可愛い」
直江は耳たぶを噛みながら言うと、ピンと立ちあがっている乳首に手を伸ばした。ビクッと
震える高耶に構わず、凝った赤い実を3本の指で擦り合わせてやる。
「アッ…! い、…てぇ」
コリコリと乳首を揉みしだくと、高耶が痛みを訴えた。少し力が強すぎたか。
直江はいったん体を離すと、ムスッとしたままの高耶からTシャツを抜き取った。
「……マジ、ここでヤるのかよ」
「言ったでしょう?」
「!」
底冷えする眼差しで笑う直江に高耶はムッと唇を尖らせると、「好きにしろ」と言った。



「アッ! んっ、ぁ…」
小さく佇立している赤い実を唇で甘噛みすると、高耶がイヤイヤをするように頭を振った。
先ほどから胸への愛撫しかしていない。
下の部分は既に形を変えているというのに、焦れったいぐらいに胸ばかりを愛撫する直江
に、高耶は苛立ち始めていた。
「……ふ! んで、ソコ…ばかり…」
いい加減下の部分も触って欲しいのに、直江は胸ばかりを弄っている。右の乳首を口に
銜え、左の乳首は指で揉みしだくという、戯れのような前戯しかしてくれない。ジーンズと
下着の下に納まったままの楔は、窮屈過ぎて辛いというのに。
「なおえっ!」
下も触れよっ、と怒鳴ると、直江は「わかりました」と答えた。
そのまま下方に体をズラし、ジーンズの前を寛げてくれるのかと思いきや、スッと立ちあがっ
た直江はどこかへと消えてしまった。
(え…?)
意表を衝かれたのは高耶だ。ここで直江が退くとは。
命令口調がいけなかったのか。直江は気分を害して部屋を出て行ってしまったのか。まさ
か、と思う一方で、そうだったらどうしようと思う。こんな中途半端な所で放っておかれるの
は、さすがに辛かった。かといって、続きを自分でやるというのも……。でも、このまま戻っ
てこなかったらやっぱり自分で……、等と、ぐるぐる考えていると、幸いなことに直江が部屋
に戻ってきた。それにホッと胸を撫で下ろした高耶だったが、直江が手にしている物を見て、
「え?」と口を開けた。
「……え? なに?」
「喉が渇いただろうと思って」
そう言って微笑む直江に、だが、高耶は頷く事が出来なかった。確かにそれは飲み物で
あったが、なんか違うというか。
「なおえ?」
訝しげに名を呼ぶと、直江が徐に牛乳パックを傾けた。
「―――あッ! バ…ッ」
高耶は息を呑んだ。何故なら、直江が高耶の胸元に牛乳を垂らしたからだ。
「バ、バカッ! 何やってるんだ!!」
早く拭けよ! と激高する高耶に、直江は匂いに釣られて寄ってきた猫を抱き上げた。
「ええ、もちろん拭きますよ」
そう言って猫を放すと、猫は高耶の体をテテテテと走り、胸の小さな尖りをペロペロと舐め始
めた。
「―――ヒャッ!」
直江に散々愛撫された体は、ほんの少しの刺激にも過敏に反応してしまう。そんなところに
猫が乗っかかり、小さな、けれどもザラザラした舌でペロペロと忙しなく舐める猫に、高耶は
急激に上りつめるのを止められなかった。
「あっ、あ、あ……!」
ペロペロペロ。
直江には真似出来ない舌の動きだ。本能のまま舐めまくる猫によって高耶の乳首は痛いほ
ど張りつめ、また、それに連動するように下の部分も固く張った。
「あぁ、…んっ! …や、ダ、…あ、……んぁっ!」
なんとか猫を退けようとするが、伸ばした手は直江に捉えられ、頭上で一つにまとめられし
まった。無防備な胸から腰にかけての部分を晒す事になった高耶は、羞恥と屈辱に大きく
体を震わせた。
「ふっ……ん、うっ」
未だジーンズも脱いでいない下半身は、胸だけの愛撫でかなりスゴイ事になっている。
それなのに直江はジーンズを脱がすところか、そのまま両手で足首を掴み、大きく開いて
M字開脚の形にした。
「やぁ……!」
裸の時はもちろん恥ずかしいが、衣類を身に着けていても羞恥と屈辱を伴う格好だ。しか
も、下の部分が堅く張っている為、その姿勢をさせられるのは非常に辛い事だった。
「なおえっ、なおえっ!!」
身も世もなく身悶え、涙を飛び散らせる高耶。
腹が空いていたらしい猫は、少しばかり居場所を変えながらも相変わらず胸元を舐めている
し、直江に恥ずかしい格好は強要させられているし、高耶は自分が酷く惨めで恥ずかしい思
いをさせられていると思った。
「もぉ…、……めてくれっ」
「高耶さんのココ、滲んできてますよ」
足を広げたまま、キケンな場所に好色な瞳を向ける直江。そのセリフで自分が今、退っ引き
ならない事態にいる事を自覚させる高耶。羞恥から、高耶は「やめてくれ!」と何度も哀願
した。
「直江っ! ヤダ! ヤダって、もう!!」
「本当に? 本当は気持ちイイんじゃないんですか? ココをこんなにして」
ジーンズの上から膨らみを触られて、高耶がビクン! と体を揺らした。
両手は、直江のネクタイによって束ねられてしまっていて動かす事が出来ない。足の間に
は男の体が入り込んでいるし、無防備に寝転がされた状態で辱めを受ける高耶は、羞恥と
屈辱から眦に涙が浮かぶのを感じた。
「ちが…! …江がいいっ!! 直江が欲しい!!」
「俺が欲しいの?」
意地悪く聞き返す直江に、高耶は首をブンブンと縦に振った。
「ほ、ほし…っ! 早くオレを、」
抱いてくれ!!
そう叫ぶ高耶に漸く足を降ろしてやると、涙でぐちゃぐちゃになってしまった顔に労りのキス
を落とした。
「すみません、酷いことをして」
「なお」
「でも、あなたが好きなんです」
「―――!!」
直江は猫をどかすと、高耶に覆い被って深いキスをした。
叫び過ぎて乾いてしまった唇には、やや乱暴に感じるなキスだった。
高耶の喉が鳴る。
飲み込めきれなかった唾液が、口の端から漏れ出た。
「高耶さん…」
キスをしながら、直江は高耶のベルトに手を伸ばした。器用にジーンズの前も寛げると、何の
前触れもなく下着の中に手を突っ込んだ。
「!!」
「ヌレヌレですね」
「……言うなっ」
直江は「すみません」と小さく謝ると、徐々にキスの場所を移動させ、そうして熱く滾った楔へ
と辿り着いた。
「お待たせしました、高耶さん」
「〜〜〜馬鹿ッ!」
股間に囁く直江に、高耶が絶妙なタイミングで罵倒した。直江は苦笑すると、下着とジーンズ
を引き下ろし、ふるふると震える屹立を口に銜えた。
「ア…ッ!」
とたん、高耶の体が若魚のように跳ねたが、心得ている直江は深く口内へと取り込んだ。
「あ…あ…、…んっ、く」
楔に愛撫を施す度に、高耶の口からあえかな声が漏れる。
理性を擲った高耶は、AV女優に匹敵するほどの美姫になる。性欲と官能に濡れた美姫に。
直江は高耶の股間を捉えながら、高耶の切なく喘ぐ様を見やった。
キュッと眉根を寄せ、薄く開いた唇から甘い声を撒き散らす高耶。
その胸はというと綺麗に反り返り、高耶が感じている事を知らしめていた。
いつ見ても、扇情的な姿だった。
直江は自分の股間も退っ引きならない状態になっている事を知覚すると、高耶の体をひっ
くり返して、薄い臀部を持ち上げた。
「なお…」
まだイけてない、と高耶が不満の眼差しを宛る。それに、「すみません」と目で訴え、期待に
ヒクつくソコに舌を伸ばした。
「あぁ、んっ!!」
勢い余って、高耶の前が弾けた。ビクビクと痙攣を繰り返す体を支え、直江は愛撫を続ける。
高耶の前から漏れていた精液が、後ろまで回っていたらしい。
初めから湿っていたソコは、直江が大して愛撫をしなくてもあっという間に花開いた。
「スゴイ、高耶さんのここ」
直江の、揶揄する言葉ももう耳に入らない。
ぐずぐずにとろけた秘部は、早く直江の剣を迎えたくて仕方なくなってる。
「な…ぇ。……やくっ」
ぷるぷると体を震わせる高耶は、もう本当に限界に近いのだろう。
前を緩く勃たせながら、早く我が身を貫いてくれるモノを今は遅しと待っている。
「はやくぅ!!」
高耶がそう叫んだとたん、直江の楔は高耶を貫いていた。
「!! んっ、アアァ―――!!」
ズブリと潜り込んだ楔は、いろんな体液をまとわりつかせながら奥へ奥へと入っていく。
キツさから高耶の体に力が入ったが、直江は自分の手を高耶の性器へと回すと、腰を揺す
りながら手の中の物も愛撫した。
「あぅっ! ア、アッ…ん!」
イッたばかりの高耶のオスは、直江の力強い愛撫ですぐに復活する。後ろがキツいせいか、
苦鳴の方が多い気もするが、先端の割れ目を弄ってやるとすぐにあえから声が口から溢れ
た。
「ふ! んんっ…、んぁ! なお…」
ズンズン、ぐちゅぐちゅ、と狭いソファベットの上で、淫らな音が飛び散る。
だらしなく広げきった足の先で、爪先がピクピクと震えていた。そして同じようなリズムを刻む
二人に、傍らで見ていた猫の狩猟本能が反応したのか。側に寄ってきた猫が、高耶の足の裏
をペロペロと舐め始めた。
「―――ヒッ!」
「?」
高耶が、いきなり引きつった悲鳴を上げた。それを不思議に思って直江が辺りを見回すと、
高耶の足先にトラ猫が蹲っているのが見えた。高耶の爪先がピクピクと震えていた事によ
り、猫の興味を引いたらしかった。足でちょいちょい弄りながら舌を繰り出す猫に、直江は
皮肉げな笑みを浮かべた。
「おやおや。この子もあなたを苛めたいんですって」
「ば、か…言ってんじゃ」
「猫から見ても、あなたは魅力的なんでしょうね」
「くぅ……ハ…っ!」
「いいでしょう。一緒に可愛がりましょうね、高耶さんを」
言うと、直江は傍らに置いてあった牛乳パックを取り、高耶の脛から足の平に少量を垂らし
た。むろん、男の楔は中に入ったままだ。微妙な動きが高耶の襞に刺激を与え、高耶は
「くぅ…!」と呻いた。それだけならまだしも、ミルクの匂いに釣られた猫が忙しなく舌を繰り
出てきたから大変だ。
「ヒァッ…! あぁ…ん…!、あん! やめ……!」
「気持ちいいの? こんなのが? ……妬けますね」
「ばか…!」
「俺も、負けてらけませんね」
そう言うと、直江も腰と手の動きを再開した。直江を銜えているだけでも酷く感じてしまうと
いうのに、思わぬ所に与えられる刺激に、高耶は一気に高みへと上りつめていく。
「あぁッ! あぁぁ……! やぁっ、も……イ……く!」
「イッて。ココからしろいのいっぱい出して」
直江が高耶の楔を強く握りしめながら、先端の敏感な所を強く抉る。その刺激が決定打に
なったのか、高耶は大きく体を震わせると、しろいものを勢いよく発射させていた。
「うぁ! アッ、アァァァ――………!!」
ビシュビシュ! と何回かに分けて発射されたしろいものは、ソファベッドに弾け飛んだ。
高級仕様のソファだ。染み抜きをするのは大変だろう。だが、それに不平を述べるどころか、
直江はこんな事を言ってきた。
「さすがにこのミルクは、この子にはあげられませんよね」
「! なっ…!」
てめぇ、といきり立つ高耶に、腰を進める事で黙らせ、直江は自分も絶頂を迎えるべく高耶
の深部に熱い芯を突き刺した。




後日、二人の愛の巣から猫の姿が消えた。
節操なしで淫らな主人達に嫌気を指して家出をした、とかではなく、猫を飼うことをやめたの
は高耶がそうしたいと言ってきたからだった。
「本当にいいんですか? あなた、あんなに猫を飼いたいって言っていたじゃないですか」
「い、いいの! もう、いらねっ。…っても、捨てるのは許さねぇからな。責任取ってお前の実家
で飼ってもらえよ」
「それは…、構いませんが」
折角の誕生日プレゼントが…、と直江は項垂れた。
これ以上は無いプレゼントを、用意出来たと思っていたのに。
しゅんとなってしまう直江に、高耶は「仕方ねぇだろ」と、ため息混じりに呟いた。
「そもそも、ここってペット禁止なんだろ? いくら所有者が身内だからって、オレ達だけ特別
に、なんてやっぱよくねぇよ」
とは建前で、猫と狂犬によるアレが二度と行われないように、と考えたからかどうかは高耶
にしかわからない。
というか、
「なんつーか、さ。……やっぱオレには、…で…充分っつーか」
「え?」
ボソボソと呟いたので、直江には聞こえなかったらしい。
何が充分ですって? と聞き返す直江に、高耶は吐き出すように言った。
「だーかーら! オレには、……犬一匹で充分だってーの!」
プレゼントも何もいらない。
(おまえさえ、……いれば)
そう言葉尻に滲ませる高耶に、直江は思わず顔を上げていた。
「高耶さん…」
(それって)
パァッと顔を輝かせる直江に、高耶は不遜な笑みでもって返した。
「そのかし、もっともっとアイシテくれんだろ?」
オレの事。

これからも。
ずっと。



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