野蛮な愛で貫いて


どうしてこんな事になってしまったのだろう。直江の雄を銜え込みながら、高耶は朦朧と
思った。
直江は高耶の為だと言った。確かにその言い分は、わかるといえばわかる。でも、
だからといって……。




「んっ……あ、ふ…」
四つん這いになった高耶の足の間に、男が体を割り込ませていた。逃げようとする腰
をガッシリと掴み、高耶の尻に顔を近づけている。
臀部に男の熱い息がかかる。それだけでたまらなくなって体を震わせると、伸ばした
親指で割れ目を開かされた。
「……っ。直江…」
予感に、ギュッとシーツを鷲掴む。その高耶の狭間に、男が舌を伸ばした。
「! んぅ……っ」
掴んだシーツがくしゃくしゃになる。腰も、過ぎる快感に逃げようとするが、直江がそれ
を押し止めた。
「やぁ……! なおえっ」
ピチャ、ピチャと卑猥な音が下肢から聞こえる。舌の柔らかい感触と濡れた感触が
羞恥を煽って、高耶の顔が真っ赤になった。
じわりと汗が滲む。
凄く恥ずかしい。
高耶は、こんな事嫌だと思った。けれどそれ以上に気持ちイイ。屈辱的な行為なのに、
高耶の口からは自然と喘ぎが漏れてまう。声なんて出したくないのに。
「アッ…! アァ…、…んっ」
「高耶さん、気持ちイイ?」
「んっ……、ふ…」
「高耶さん……」
「!」
直江が舌をツ…と滑らせた。蟻の門渡りを伝って、ぶら下がる二つの実に舌は辿り着
く。ぶるりと体を震わせた高耶にお構いなく、直江は二つある実の一つを口に含んだ。
「ヒッ…! あぁ……んっ、…直江っ」
自分が今、どんな格好で男の愛撫を受けているのか、考えるだけで体が熱くなる。
男同士の背徳的な行為。頭ではいけない事だとわかっているのに、もっとして欲しい
とさえ思ってしまう。
(こんな、自分……っ)
なんて淫らなんだろう。こんな自分は知らない…ッ。
直江とこうする前は、どちらかというと潔癖のきらいさえあったというのに。今の自分は
なんなのか。男に恥ずかしい姿を晒して、女のように淫らに喘ぐ。
(お前が変えたんだ…。オレをっ)
「んっ」
鼻に抜けた声が出た。直江が飢えた犬のように袋をしゃぶっている。あの直江が
娼婦みたいな真似をしているのかと思うと、それだけで息があがる。たまらないっ…!
「ふ……、んんっ…!」
ポタ、ポタと先端から白濁したものがこぼれた。それはシーツに淡い染みを作り、その
範囲をじわじわと広げていく。袋ばかり弄られて、まだ前のものには触れられていない
というのに、ソコは大きく反り返り、高耶の快感の度合いを知らしめていた。
「な、おえ……っ。……やく」
後ろがヒクついていた。中途半端に放っておかれている。直江の唾液で潤っていたソコ
は、収縮する度に卑猥な音を響きわたらせていた。
「もぅ……、やぁ……!」
グッと、股間に伸びた高耶の手が自分のものを掴んだ。そのまま堰を切ったように扱き
始める高耶に、直江はくすりと笑みをこぼす。
「もう、我慢出来ないの?」
「うっ……、う…」
「せっかちさんですね」
直江はジュプ…と、いったん袋を口に含んで、いやらしいぐらい唾液を絡みつかせると
そこから顔を離した。小刻みに震えている高耶の腰を掴み、入り口に自分のものを宛う。
高耶の媚態を見続けていた直江のそこは、既に大きく勃起していた。
「これが欲しい?」
言いながら、自身をソコに潜り込ませる。ほんの数センチだ。痛みすら感じない僅かな
進入に、焦れた高耶が腰を揺らした。
「や、だ……! もっとぉ……」
ぎゅうっと前を握ったまま、高耶が涙をこぼす。もう本当に限界だった。イかされていない
前も、放っておかれたままの後ろも。早く挿れて欲しくて仕方ないのに、今日に限って
直江は意地悪だ。いつもなら、高耶の制止も聞かずに挿れてくるくせに。
「なおえぇ……」
涙混じりの声が切ない。
直江は眉を下げた。
もとより意地悪するつもりはないのだ。それに、
(俺もそろそろ限界だな)
直江のペニスからも、先走りの雫が漏れている。本当は早く入りたくて仕方ないのだ。
高耶が辛いだろうと思って今まで耐えてきたのだが、もう……。
「高耶さん、挿れますよ」
ゆるゆると前を扱きながら、高耶が頷いた。背中は汗でびっしょりである。
直江は少しだけ潜り込ませていたものを、グッと押し込んだ。
「あああぁーーー!」
高耶の中は熱かった。ぎゅうっと絞られる感触に汗を滲ませながら、直江は刀身を埋め
込んでいった。
「あぅ…っ! アァ……!」
なんて質量感。狭いソコに、太くて堅いものが無遠慮に入ってくる。縋るように自分の
モノを掴んだ手は、精液によって滑った。
「ヒッ…! あ、ふ…っ…。なお、………なおえぇっ」
圧迫感はあったが、直江のものを銜えているのかと思うと嬉しかった。アレで、もっと思
い切り突いて欲しい。どうにかなりそうなぐらい、激しく。そこには、先ほどまでの躊躇
していた自分はなく、これからの行為に期待する獣がいた。だらしなく唾液を垂らし、
いやらしいものを勃たせ、男の前に体を開く獣。快楽だけを追う、下賤な獣。もう、どうで
もよかった。今はこの快楽に溺れていたい。
涙を滲ませながら来たる刺激を待つ高耶。だが、その期待は裏切られた。
「直江……?」
直江は刀身を埋め込んだまま、一向に動こうとしない。
太いものを銜えこまされたままの高耶は、次第に焦れったくなってきた。
(なんで……っ!?)
擦ってくれなくてはダメだ。突いてくれなくてはイヤだ。蛇の生殺し状態の高耶は、ギリッ
と歯を摺り合わせた。
「なん…で、だよっ? …なお……っ」
はあ、はあ、と荒い息を吐きながら、高耶が前を擦る。かなりギリギリの所まで来ている。
なのに男が動いてくれないからイけない。突いて欲しかった。抉るように、下から激しく。
手淫なんかじゃなく、後ろでイきたい……!
「なおぇ……っ。んっ…、…動いて…く…っ!」
「動いてほしいの?」
「!」
なんで、そんな事を聞くのだろう。自分だって辛いくせに。
「直江っ……、直江っ!!」
「動くと、辛いのはあなたですよ」
「……っ」
それでも。それでも動いて欲しかった。痛みなら我慢出来る。だから、お前をオレに…っ。
ぎゅうっと前を掴んだまま泣き出した高耶に、直江は眉を下げた。
「わかりました。……動きますよ」
「アァ…ッ!」
ぬぷっ、と卑猥な音を立てながら、男根が抜かれていく。かと思いきや、ズン! と一気
に突かれて、高耶の前が弾けた。
「アッ! あああぁぁ――!!」
熱いもので奥を突かれた高耶は、切れ切れの悲鳴を上げながらシーツに身を預けた。
男を銜えたまま。
「…アッ…、は、ぁ………んっ」
「おやおや…」
直江は笑うと、萎えてしまった高耶のペニスに手を伸ばした。焦らされ過ぎたそこは、
精液でぐちょぐちょになっている。直江はその肉塊を手に取ると、爪の先で割れ目を
弄ってやった。
「あぁ、んッ!」
キュッと後ろが窄まる。イッたばかりの体には、過ぎる刺激だ。グリグリと押しつぶすよう
に爪で抉ると、高耶は綺麗に背を撓らせた。
「オ、オレ……、もぉ……!」
前は再び力を取り戻している。先端からは止めどなく精液が溢れ、後ろも激しく収縮を
繰り返している。限界が近かった。「もぉ、イくっ!」と思った瞬間、高耶の耳に男が熱く
囁いた。
「高耶さん……。愛してるっ」
その声だけで感じ入ってしまった高耶は、我慢することもなく二度目の放出を果たして
いた。




「……なぁ。…さっきの。オレの為って……なに?」
眠ったかと思っていた高耶が、ふいに口を開いた。高耶の体を清めていた直江は、
拭うのを止めると眠そうにしている高耶を覗き込んだ。
「目が覚めたの?」
「なぁ……なおえ」
高耶は今にも眠ってしまいそうだった。目を瞑ったまま億劫そうに口を開く高耶に、直江
は優しい目を向けた。
「言葉の通りですよ」
「……言葉のとおり?」
「えぇ」
直江は手を伸ばすと、サラサラの黒髪を梳いてやった。
「あなたが辛くないように……」
直江の言い分によると、直江は待っていたらしい。高耶の体が太さに慣れるまで。
いくら幾度となく繰り返してきた行為とはいえ、男同士の行為だ。高耶の負担が大きい
のを、直江はいつも心苦しく思っていたのだ。だからといって、自分が代わりにという
わけにはいかない。だとすれば、直江の唯一出来る事といえば、高耶への負担を少な
くすることぐらいしかないのだ。
「それで、おまえ……」
直江は少し困ったように笑った。これぐらいしか出来ない自分が歯がゆくもあった。
しかし、
「も……、…なくて………いい」
「え?」
「もう…、あんなのは……」
ヤだ。そう言うと、高耶はシーツに顔を埋めてしまった。
「え? 高耶さん? それはどういう……」
答えを求める直江に、高耶は心の中で思った。
そんな気遣いなんていらない。おまえのやりたいようにやればいい。それに、
(焦らされるのは、ちょっと……)
顔を赤く染めたまま、高耶はギュッと目を瞑った。
こんな事を思う自分が恥ずかしかった。でも、
(優しくなんかなくていい)
もっと野蛮な、愛が欲しい……。


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