| 有罪
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その言葉は、恐怖と共にやってきた。 「脱ぎなさい」 そう言われて思わず顔を上げた高耶の前に、冷たい目をした男がいる。 高耶は言われた言葉の意味することに震えながら、ただ瞳を大きく見開いた。 「聞えなかったのですか? 服を脱ぎなさいと言ったんです」 再度、男が言った。だが、おいそれと従うわけにはいかない。そんな屈辱的な 行為を、なぜ男の前でしなくてはならないのか。 高耶は反発をこめた瞳で直江を睨んだ。が、それで状況が好転する訳もない。 男はうっすらと笑みを浮かべながら、高耶の出方を待っている。その様はまる で、小動物をいたぶるそれのようだった。 「……ッ」 耐えられなくなったのは、高耶の方だった。 震える指がゆっくりと衣服にかかる。何気ないその動作がぎこちなくなるのは、 男の目に射られているからだ。なのに、 「そう、全部脱いで下さい。私の前で全裸になるんです」 「……ッ! 直江っ!」 ハッキリと告げられた言葉に、カッとして声を荒げた。が、当の直江は萎縮する こともなく、顎でしゃくるように続きを促されて高耶は仕方なく衣服を全て脱ぎ 落とした。 所詮、直江には逆らえない。勝敗が決まった時点で、高耶は直江の支配下に 置かれたのだ。ここで男に逆らいでもしたら、手ひどい制裁が与えられるに決ま っている。それがわかるだけに、高耶は男の怒りに触れないよう従わざるを得 ないのだった。 「ああ…、綺麗ですね。あなたはやはり、何も身につけていない方が素敵だ」 わざと離れた所から全身をくまなく眺められて、高耶は羞恥に顔を赤らめた。一 人だけ全裸を晒していることもそうだが、まといつくような男の視線がたまらな い。かすれた男の声も、今の高耶には耐えがたいものだった。 「……っ」 「どうしたの? そんなに震えて。……感じているんですか?」 「だ、だれが……!」 「あなたはいやらしい人ですねぇ。見られただけでソコをそんなに堅くして。何も 知らない聖職者のような顔をして、その実ひどく淫らだ」 高耶は震えている。男の蔑みに。そんな高耶をどこか楽しそうに見ていた直江 は、ソファに腰かけると次の命令を下した。 「こちらに来なさい。私の前に来て、あなたの野蛮な所を見せなさい」 その言葉に高耶はパッと顔を上げた。 今、なんて言った―――? 信じられない言葉に高耶はいやいやと頭を振ったが、男の目が淫行を強要する。 高耶は焼き切れそうな羞恥の元、のろのろと男の前に立った。 顔が熱かった。男の前に無防備な姿を晒していると思うだけで、羞恥と屈辱で 顔から火を噴きそうだった。とても顔を合わせる事が出来ず下を向いていると、 伸びてきた直江の手によってグッと顎を持ち上げられた。 「…ッ」 「顔をあげなさい。下を向いていたら面白くないでしょう?」 掴まれた顎が痛い。無理やり顔を上げさせられて、高耶は苦しそうに眉を絞っ た。そんな高耶の表情にもそそられるのか、直江の目に好色そうな色が帯び た。 「苦しいんですか? もうココをこんなに堅くしているんですものね」 「アッ!」 直江の左手が、いきなり高耶の股間のものを握った。高耶のソレは、直江の 言う通り確かな反応を見せ始めていた。 「いいでしょう。イかせてあげますよ」 直江は屈み込むと、高耶が戸惑う隙も与えずにその細い腰を両手で掴んで、 前にある野蛮なモノを口に含んだ。 「あ、ぁん!」 温かな口腔に包まれて思わず恥ずかしい声を上げた高耶は、これ以上にない くらい真っ赤になった。こんな一方的な行為に、感じてしまう自分が情けなかっ た。愛の伴わない情交ほど屈辱的なものはない。それなのに男の前に恥ずか しい姿を晒し、更に男の舌によって高められる自分はなんなのか。所詮、心と 体は別個たる物と言われているようで、高耶はやりきれなさに瞳を潤ませた。 しかし、そんなことを考えていられたのは最初だけだった。悔しいことに男の口 淫は見事だった。いやらしい舌の動きも、戯れのような歯の立て方も、強く吸引 する唇も、なにもかもがたまらない。しかも時折、両にあるフクロもやんわりと 揉みこまれて、あまりの気持ち良さに気を失いそうだった。 (あぁ、なんて愛撫なのだろう……) これが高耶を陵辱する男の手なのだろうか。言葉とは裏腹に、強引だけれども どこか優しい男の愛撫。そんな風にしないでくれ。お前に愛されているのだと、 錯覚してしまうから……。 お前はただ、自分よりも優れている人間に勝ちたかっただけなんだろう? オレじゃなくても、自分よりも優れている人間なら誰だって良かったんだ。自分 のオスの矜持が守られれば、それで……。 だから、そんなに優しく触らないでくれ。負けた人間が情けをかけられるほど、 惨めなものはないのだから。 「高耶さん」 「!」 名を呼ばれ、ハッとした時には強くソコを吸われていた。身構えることも無かっ た高耶は、あっさりと直江の口の中に解き放ってしまった。 「あっ、は――…」 ガクンと膝を崩し、今だ息の整わない高耶の上に直江は覆い被さる。赤黒く変 色したソレを取りだし、今度は自分の番だと言わんばかりに眼前に晒す。高耶 は涙で潤んだ瞳で直江を見上げたが、押しつけるようにそれを唇に当てられ 仕方なく直江を口に含んだ。 高耶を可愛がっているうちに興奮したのか、直江のモノはかなりの質量になっ ていた。これの行く着く先が今度はどこなのか、おぼろげながらも察している 高耶は恐怖に体を堅くした。 きっと、違わずこれを下の口に受け入れさせられるのだろう。 こんな、大きなものを―――。 「高耶さん、舌の動きが疎かになっていますよ。もっと巧みに使いなさい。私が してあげたように、さぁ」 「!」 感じているせいか、男の声は熱くかすれていた。それに思わずドキリとしてしま った自分に、高耶は自己嫌悪した。が、感傷に浸っている場合ではない。グッ と男に腰を押し進められ、高耶は思わず歯を立ててしまっていた。しかし、その 行為は男に快感を与える結果になったらしい。ウッと小さくうめいた後直江は素 早く高耶の中から引きぬくと、高耶の顔面に向かって精液をまき散らした。 「―――!!」 ビシャッビシャッとかかった液体は、高耶の顔を白く汚している。それにまた興 奮して熱くなる股間に、直江は苦笑した。 「よく出来ましたね、高耶さん。―――良かったですよ」 「……」 その言葉に、高耶は泣きそうになった。 相変わらず男の言葉は酷く、高耶を傷つけていた。けれど、行為の合間に見せ る、男の苦しそうな表情が高耶は気になっていた。 どうして、こんなことになったのだろうか。 直江も自分も、こんな行為は楽しんではいない。互いに苦い思いをしながら、ど うして自分達は抱きあっているのだろう。 それは、…知っている。高耶がかつて口にした、挑戦的なセリフが原因だった。 ―――お前がオレに勝つ事が出来たなら、抱かれてやってもいい。 あの時は直江を繋ぎとめたい一心でそう言った高耶だ。むろん、直江に負ける つもりもなかった。しかし、直江に抱かれるつもりはなかった、とは言いがたい 高耶だ。誰よりも直江の手の中で安らぎたかったのは高耶なのだから。 しかし―――、 (これで本当に良かったのだろうか) オレ達が取っている行動は、結局主従の粋を越えていない。立場さえ違えど、 どちらかが優位に立つ事でかろうじて今のバランスを保っている。 なんて哀しい関係なのだろう。愛だけで愛す事ができたuら、こんなにも辛く悲 しい思いなんてしなく済んだのに。満たされる幸せに、微笑んでいられただろ うに。 (なんてオレ達は、救われない存在なのだろう) ―――それでも。 オレもお前も敢えてこの求めあいを選んだんだ。 今更、引き返す事なんて出来ない。 「! な…に!」 足首を掴まれて横に広げようとする男の動きに、高耶は不安げに見上げた。 それに頓着することなく直江は高耶の足を持ち上げると、その中央には小さく震 える物があった。 「おや。あなたも感じていたみたいですね。可愛い人だ」 直江は足を抱えたまま前屈みになると、先ほど散々可愛がってやったソレの 先端に、わざと音を立てて口付けた。 「!」 あまりの淫らさにギュッと目を瞑る高耶。しかし、その後の直江の行為にその瞳 はすぐに見開かれた。 「な…っ!」 ヌルっ、とソコを舐め上げられて、高耶の体が反応した。 直江が、後ろの恥穴を舐めている…! かなりの羞恥があった。そんなトコ、人目に晒したこともなければ、自分でも見 た事がない。そんなところを、あろうことか直江は舐めているのだ! 「や、あ! イヤ…だ、なおっ!」 聞き入れてくれるわけがないと知りつつも、高耶は抗わずにはいられない。 それほどこの行為は高耶にとって恥ずかしいものだった。 「なおえ……。もぉ……! やぁ…ッ」 逃れるように腰を揺らしてみるが、それは直江の目を楽しくませるだけだ。 絶望的な気持ちになって涙をこぼす高耶に直江は散々愛撫を施すと、やがて スッとその身を引いた。 (……え?) 次いで続けられるだろう行為は、何故か訪れなかった。戸惑いながら身を起こ す高耶に、直江は手を伸ばしてきた。 「なお……」 「いらっしゃい、高耶さん」 「……え?」 「こちらに来て、腰を下ろしなさいと言っているんです」 「……!」 高耶の前で直江は誘うように手を伸ばしている。その手を取って腰を下ろすと いう事は……、すなわち自ら男を受け入れろと言っているのだ、直江は。そんな こと、出来るはずがない。無理やりされるのではなく、自ら男を迎え入れるだなん て。さすがに躊躇して動けずにいる高耶に、直江は決定的な一言を投げつけた。 「あなたは私に負けたんです。いいから私に従いなさい…!」 高耶は悔しそうに唇を噛んでいたが、認めたのか、のろのろと直江の上に腰を 下ろした。 「そう。それを持ってあなたの中に入れるんです」 握らされた肉塊が、高耶の手の中でビクビクと震えている。直江ももう限界だ。 すぐにでも高耶の中に押し込みたいだろうに、それでも直江は一切手を貸そう としない。あくまで、高耶の意志で入れさせようとしているのだ。それがわかっ ているだけに、高耶はひどく惨めな思いにかられていたが、それが直江の下し た命令とあっては仕方ない。どのみち反抗しても、最終的には直江を受け入れ させられるのだろう。 高耶は覚悟を決めると、直江の唾液に濡れた恥穴にそれを潜りこませた。 「くぅ……!」 高耶の狭い道を、熱く堅いものが入ってくる。相当な圧迫感に息が詰まる。けれ ども、下から無理に突き上げられることもなかった為か、初めてにしては楽な 挿入だったと思う。 と、ふと、過去の出来事と照らし合わせている自分に気がついて高耶は青ざめ た。今のは、昔の記憶だ。まだ景虎として生きていた400年前の―――。 「………?」 直江を銜えこんだまま、微動すらしなくなった高耶に直江はいぶかしげな視線 を送った。 見ると、その顔は紙のように白くなっている。体も小刻みに震えてるし、直江の 腹に当たっていたモノもいつの間にかすっかり萎えていた。それを見てとった直 江は気分でも悪くなったのかと思ったのだが、どうも違うらしい。心ここに在らず といった高耶は、他の事を考えている。その証拠に、胸の飾りを弾いてやっても 高耶は何の反応も示さなかった。 その時直江を襲った感情は、とても激しいものだった。 ひどく暴力的な気分になって、高耶の腰を掴むと下から乱暴に揺さぶり始めた。 「ヒッ! あ…っ。アァ……ッ!」 「何を考えていたんですか、あなたは。私の腕の中で他の事を考えるなんて、 余裕ですね」 「あ…ちが……っ」 「何が違うの。俺が気がつかないとでも思っていたんですか?」 「あぁ……!」 いきなり萎えたものをグッと掴まれて、高耶は悲鳴をあげた。 「わかっているんですか? あなたは道具なんですよ! 私の思うがままの。 勝手は許さない!」 後ろに直江を銜えたまま前を強く握られて、高耶は強すぎる快感に涙をこぼし た。 「アァっ! …い、やぁ……!」 のけぞる高耶を直江はしっかと抱きとめ、下からズンズンと突き上げる。 強く揺すぶられて、前からとめどなく涙が溢れた。内股を引きつらせながら嬌声を 上げ続ける高耶に、直江はうっとりと目を細めた。 そうだ。それでいい。 あなたは俺の腕の中で喘いでいればいいのだ。 他なんて許さない。 誰にも晒さないで。素のままのあなたを。 あなたを犯す権利があるのは、私だけなのだから。 間違えないで、高耶さん。 例えどんな形であっても、私が欲しいのはあなただけ。 あなたを得られるのであれば、あなたに憎まれてもいい。 誤解されたままでも、あなたを抱けるのであれば私は………。 「愛しているんです、―――景虎様」 |
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